乳がん患者の悩みに合わせられる胸パッドに出合い
──「購入して試してみたい」から、「いい商品だから広めて販売しよう」まで、発想が飛躍できたのはどうしてだったのでしょうか?
神田さん:販売して利益を得たい、というよりも、私のように泣いている人がたくさんいるだろうな、と思ったんです。そもそも私の会社の基本的な収入は不動産で、下着の販売は利益を求めてやっているわけではありません。ただ、とにかく自分のように困っている人に知ってほしい、という思いでした。
病気で入院した人はふつう、退院後外出するのを待ち遠しく感じると思います。でも私は外出することを考えることすら恐怖で、ひとりでカーテンを閉め切ってシクシク泣いていました。ひとりで泣きながら下着を探し回らなくて済むように、しかも、他人の視線も感じず、ゆっくり試着してもらいたいな、と。それで、自社ビルの一角にサロンを作って販売しようという思いに至りました。

── リプロの下着はどういった点が画期的だと感じたのでしょうか。
神田さん:よくあるのはシリコンやウレタン製のパッドなんですが、これはもう形が決まっているんですよね。20歳くらいの方であればキレイに見えるんですよ。ただ、働き盛りのお年ごろの女性になってくると、胸が下垂してきたりして形が変わってきてしまうんです。だから、全摘したほうの片胸にだけキレイな形のパットを入れてしまうと、パッドを入れていない下垂した胸との差が目立ってしまうんです。ウレタン製の軽いパッドだとすぐにズレてしまいますし、シリコンは逆にすごく重くて肩が凝ってしまいます。パッドが素肌に触れるので、冬は冷たいですし…。
このリプロのパッドのいい点は、パッドの中にチップが入っているので、健常な胸の形に合わせて形が作れるんです。胸の形はみんな違いますし、がんを切除した部分によっても、パッドの形を微妙に調整する必要があります。チップの量を増減させれば、その人それぞれに合わせた微妙な調整が可能なんですね。オーガニックコットンで肌にも優しく、縫い目がないので傷が擦れて痛いという方にも使っていただけます。しかも、パッドをブラジャーのアンダー部分にはさみこんで固定すれば、もう動かないんですよ。なので、しっかり2時間はカウンセリングをして、手持ちのブラジャーに合わせられるように試着を何回も繰り返し、サイズも微調整してお持ち帰りいただいています。