人のために動き出したら気持ちも上向きに

── 手術後は心療内科に通うほど落ち込んでいたところ、そこまで前向きになれたのは何が支えになっていたんでしょうか。

 

神田さん:リプロの商品にたどり着いてホッとしたときに、「川崎でサロンを開けば、私のように大変な思いをして北海道まで行かなくても、首都圏の方も気軽に来られるし、お役に立てるんじゃないか」という自分の使命に気づいたんです。そうやって人のために動くようになったら、メンタルもすごく回復しましたね。心療内科通いも、抗うつ薬を飲むのもやめました。

 

── 落ち込んでいるときは、つい気持ちも内向きになってしまいがちですね。

 

神田さん:そうなんですよね。つらいときに素直に落ち込む時期も必要だとは思うのですが、「私ってかわいそう」という気持ちに浸りすぎてしまうと、それが気持ちよくなって抜け出せなくなってしまう、と本で読んだことがあるんです。私にとっては自分の使命がわかって、目標が見えたことがすごく大きかったです。私、動いてなんぼの人なんですね(笑)。それで気持ちもすごく元気になりました。

 

 

神田さんが運営する乳がん患者専用下着の試着・販売サロンには、20〜80代まで幅広い年齢層の方が訪れます。共通する悩みは、「乳がんだと他人に言いたくない」「気持ちがわかってもらえない」というもの。そんな方々に神田さんは自身の手術痕を見せ、気持ちに寄り添い、胸をなくした人たちが自信を取り戻せるように今日も下着の販売を行っています。

 

取材・文/市岡ひかり 写真提供/神田文子