普通じゃないことは「校則だからダメ」だと

── 当時はトランスジェンダーという言葉も、ほぼ認知されていなかったですよね。
佐藤さん:友達の親から「あの子とは遊んではいけない」と言われたこともありました。それがきっかけだったのか、友達が急に遊んでくれなくなったり、無視されることも。でも当時は「なんでダメなの?」って、大人にもはっきり意見を言っていました。理不尽さを感じることはあっても、自分が納得いかないことにはちゃんと声をあげていました。仲のいい子とは変わらず遊んでいたので、小学校まではそれほど困った記憶はありません。でも、中学生になると、普通じゃないことが「校則だからダメ」と一方的に禁止されるようになっていきました。
── どのようなことを禁止されたんですか?
佐藤さん:髪が少しでも長いと怒られて、学ランを着ていないとまた怒られて…。小学生のころは「なんで?」って自分の気持ちを言えていたけど、「校則だからダメ」と言われると、それ以上は何も言えないし、どうすることもできないですよね。自分のやりたいことを通そうとすると、「男子なんだから、普通は学ランを着るよね?」って。「普通」と違うし校則だからダメだと否定される。そうやっていろんなことを禁止されました。
── 校則だからと言われると、どうしようもないですよね。
佐藤さん:はい。それでも、学ランを着て男子生徒として学校に通うことには抵抗がありました。それで、母が学校に掛け合ってくれたのですが、「前例がないからダメ」「校則だからダメ」と、聞き入れてはもらえませんでした。私としてはどうしても学ランを着たくなかったし、その理由にも納得ができなかったので、中学2年生から学校に行かなくなりました。