「試合よりも出産の立ち会い」がメジャーの日常

── 2013年にはアメリカで第2子となる長男を出産されています。日本に一時帰国する選択肢もあったと思うのですが、なぜアメリカを選んだのでしょうか?

 

青木さん:出産予定日が6月で、ちょうどメジャーリーグのシーズンど真ん中だったんです。夫のサポートは続けたかったし、夫婦ともに「家族は一緒にいるもの」という考え方が一致していました。それに、長女は日本で出産したので、「アメリカの出産はどんな感じだろう?いい機会だから経験してみよう」という好奇心もあったんです。

 

実際にアメリカで妊婦生活を過ごしてみて、日米の文化の違いを身をもって体験しました。日本だと妊婦が太りすぎると注意されますが、アメリカだと15、16キロは太るのがふつうらしくて。私は10キロくらい太ったのですが、「妊婦なのにやせすぎよ。赤ちゃんに栄養を与えるために、体重は気にせず食べたいだけ食べて」と病院で言われてびっくりしました。

 

青木佐知
アメリカ在住時は子どもと一緒に折り紙を楽しむなど、親子の時間を大切にした

出産も日本だと自然分娩が主流ですが、アメリカの妊婦さんは9割以上が無痛分娩を選択していました。出産日を決めたら、その日に病院に行き、陣痛促進剤、無痛分娩のための麻酔を打ち、痛みなしの出産となります。とても合理的だし、体の負担が少なかったです。日米の文化のどちらがいいとか悪いではなく、それぞれを認め、自分に合った方法を選べるのが理想だと感じます。こうしたアメリカの合理的な考え方のおかげで、シーズン真っ最中だった夫も出産に立ち会えました。ちなみに夫は「日本人メジャーリーガーではじめて産休を取得した選手」なんです。

 

── 旦那さんが産休を取得したのはどういった経緯があったのでしょうか?

 

青木さん:夫は最初、産休を取得するつもりはなかったんです。競争の激しいメジャーリーグで数日間でも試合を休んだら、ライバルに後れをとってしまうと考えていたので。私自身も「夫は試合、妻は出産」と役割分担するのが当たり前だと思っていました。

 

ところが当時、夫が所属していたミルウォーキーの監督に「出産に立ち会わないなんてどういうことだ?人生のなかでも何度もない大切なことなんだから、ちゃんと休んで奥さんにつき添ってあげなさい」と言われたんです。先日、大谷翔平選手も産休を取得して話題になりましたが、アメリカだと家族を優先する文化なんですね。すごく素敵なことだと思いました。