フリーアナウンサーの小澤由実さんは43歳のときに白血病と診断され、7か月におよぶ入院治療を受けました。抗がん剤の投与が始まると、吐き気や脱毛など副作用に苦しんだこともあったそうですが、家族の支えと仕事先からの「待ってるね」という言葉が支えになったといいます。(全3回中の3回)
病気発覚前に社労士を目指して

── 2022年4月に急性リンパ性白血病であることが判明。7か月におよぶ入院生活中は、吐き気や脱毛など抗がん剤の副作用に苦しんだ時期もあったと聞きます。完全寛解して無事に退院された後、定期的な通院治療を続けながらフリーアナウンサーとしての仕事復帰されたのですか?
小澤さん:退院して2か月後に司会の仕事で復帰しました。入院中も後半はずいぶん体がラクになり、病院の敷地を歩き回っていたおかげである程度、体力が回復していたのがさいわいでした。入院前にレギュラーパーソナリティーだったラジオ番組は、再び自分がメインで仕事をすることはないだろうと思っていたのですが、担当者から「待ってるよ」と言ってもらったのを支えに治療を受けていました。約1年ぶりに収録スタジオに入ったときは「懐かしい」「ホームに帰れた」と感無量でした。
── 今は入院前と変わらない仕事量なのですか?
小澤さん:実は3年前に社会保険労務士の資格を取っており、そちらの仕事もしているんです。白血病が発覚する前のことですが、コロナ禍で仕事が減っていたので、国家資格を取ろうと思い、社会保険労務士の資格に目標を定めました。社会保険労務士は、企業の人事・労務管理に関する専門家。採用から退職までの労働や社会保険、年金や福利厚生の相談に応じるなど、業務は多岐に渡ります。1年間猛勉強して資格を取り、入院する半年ほど前に合格していました。ただ、社会保険労務士は合格したら終わりじゃなくて、実務経験のない私は、資格登録のために講習を受ける必要があり、最後の講習は入院中にeラーニングを利用して、ベッドの上で受けました。
── なぜ社会保険労務士の資格を取ろうと思ったのですか?
小澤さん:夫に勧められて取得したんです。夫は中小企業診断士として中小企業の経営課題に対応するためのコンサルティングを行う仕事をしているので、社会保険労務士の資格が取れたら、企業の経営と労務、両面からアドバイスできる立場として将来的に一緒に仕事ができるのではないかという考えもありました。資格試験では、あと1点たりなかったら不合格という点数で、本当にギリギリでした。当初は資格を取るまでに2~3年はチャレンジが必要だろうと考えていたのですが、幸い1年目で合格できました。もしそこで落ちていたら病気や入院で勉強どころではなく、絶対にあきらめていたと思います。コロナ禍で仕事が減って資格取得の勉強時間が取れたこと、白血病で入院する前に合格できたこと、入院中の症状が落ち着いた時期にeラーニング講習が受けられたこと、すべてタイミングがよかったですし、奇跡的でした。
いまではありがたいことに入院前よりも仕事が増えていて、フリーアナウンサーと社会保険労務士、それぞれの仕事に取り組んでいますし、両方がつながる仕事もあります。たとえばアナウンサーとして話し方講座や新人研修の講師をすることがあるのですが、そこに社会保険労務士の資格も加わるとさらに講座や研修の内容に深みを持たせることができます。自分の経験がすべてムダにならずにつながっていると感じます。