父に物音が聞こえないようにビクビクして

── なにかつらいことがあったのでしょうか?
坂本ちゃん:どうなんでしょうね。当時、父は40歳過ぎでしたが、何か思うようにいかないことがあって、お酒に逃げてしまったのかしら。お酒を飲んで暴力を振るうことはなかったのですが、人格を否定するような怒り方をするのですごく嫌でした。
家族の夕飯はだいたい6時くらいからはじまっていましたが、父はひと足先にお酒を飲み始め、家族と一緒にご飯を食べた後は、8時くらいには寝ちゃうんです。家族は食後にテレビを観ていたのですが、「テレビの音がうるさい!」と父が怒って起きてくることがあったので、父にビクビクしながら、ほとんど聞こえないような音量でテレビを観ていました。
あと、父の兄が埼玉に住んでいた時期があって、私たち家族が山梨から埼玉に行って、みんなでご飯を食べる約束をしていたことがあったんです。でも、待てども待てども兄が来なくて、理由はわかりませんが結局、最後まで兄は来ませんでした。しょうがなく家族だけでご飯を食べることになりましたが、店内に着いていたテレビを私が観ていると、父が「なんで、口を開けたままテレビを観ているんだ!」と、いきなり激怒されたんです。それがものすごいショックで…。
兄が来ないイライラを私にぶつけてきて、もう小学生だから自分が八つ当たりされていることもわかるじゃないですか。今まで父に対して我慢してきましたが、そこから父に対して完全NGになりました。親に何かを言い返すことはなかったのですが、家族だからホッとすると思う場面はほとんどなかったですね。
いっぽうで、兄弟のなかで父と性格がいちばん似ているのも私だと思うんです。
── どういうところが似ていますか?
坂本ちゃん:父のように理不尽に怒ることはないんですけど、父は「あれがしたい、これがしてみたい」と自分の夢ばかり語りながら、お金の管理は曖昧でしたし、家族がいるのに途中から働かず、生活設計もしていなかったんです。家族を持つべき人じゃなかったと思います。
私も子どものころからお金を稼ぐことより、役者や芸人になりたいと夢ばかり追いかけてずっと貧乏でした。好きなことにハマって先を考えずに動いてしまうところは似ているんだと思います。だから同族嫌悪っていうんですかね。それが嫌で、父がやってきたタバコは吸わないし、お酒も誘われなければ自分からは飲みません。今は新宿のゴールデン街で週1回店番をしているので、きれいな飲み方をする人もいるんだなと知りましたが、基本的に自分から飲みにいくことはないです。