離婚で壊れた家族「元妻の病気で輪になれた」

── この自宅での看取りは、宮川さんにとって、どのような意味を持つものだったのでしょうか。

 

宮川さん:離婚した元夫婦が、再び「家族」として最期まで寄り添うという決断は、簡単なことではありませんでした。でも、娘たちの強い願いと、「病院で最期を迎えたくない」という本人の思いに突き動かされ、「これからしばらく不思議な生活が始まるな」と、思っていました。

 

── 不思議、というのは…?

 

宮川さん:離婚によって関係性が変わった家族4人が、元妻を中心にふたたび輪になるような感覚というのでしょうか。「人生って本当に何があるかわからないな」と、あらためて感じます。

 

でも、今振り返ると、この選択をしてよかったなと心から思っています。後から娘に「パパが、うちでお母さんのめんどうを見ようと言ってくれたこと、ものすごくうれしかったんだよ」と、気持ちを伝えてくれました。娘たちにとっても、あの時間は、生き方や家族のかたちを考える大きな節目になったのではないかと思います。

 

 

がんを患う元妻を自宅に迎え入れる宮川さんの決断は、娘たちの強い願いと元妻自身の「病院はイヤ」という思いに突き動かされたものでした。しかし、自宅に移って1日ほどで元妻は亡くなります。そして、遺品のスマホには元妻からの未送信LINEが…。宮川さんはそのメッセージを今でも大切に残しているそうです。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/宮川一朗太