表(おもて)早紀さんは、災害用の女性下着を大学在学中に開発しました。その背景には、思わず聞いていてゾッとするような避難所での性犯罪や盗難被害などが影響しているそうです。

避難所で「下着は干しにくい」

── ボランティアに熱心な両親のもとで育ち、小さい頃から避難所などを訪れていたそうですね。学生時代にも被災地でボランティア活動を行い、災害用の女性下着を開発したと伺いました。

 

表さん:ボランティアの経験から、女性特有の物資がたりていないことに気がつきました。避難所に送られてくる物資のなかでも女性の下着はあまり着目されておらず、物資として届くことも防災用品として備蓄されていることもほとんどありません。

 

表早紀さん
災害用女性下着をイベントで紹介する表さん

物が十分にないなかで、みなさん工夫をして避難所で生活をしているのですが、なかなか洗濯ができないので、物資にある生理用ナプキンを下着につけて取り替えているという声を聞きました。つけ続けることによってデリケートゾーンに炎症を起こしてしまう方や出血してしまう方も多いようです。

 

── 下着は自分で洗ったとしても、干すのはためらわれますね。

 

表さん:避難所によっては洗濯物を干すスペースを設置しているところもありますが、女性が避難している目印になってしまうことや顔見知りの近所の方が避難していることもあって、下着を干しにくいという意見が多く聞かれました。自分と同世代の方が困っている姿を見たことと、自治体の備蓄や防災グッズにも下着はあまりないので、犯罪抑止の観点を視野に入れた、なるべく性的に見えない下着らしくない下着を自分で作ろうと思いました。

 

── 開発された下着は、色も形も一見、女性用の下着には見えません。

 

表さん:避難所で配布する際に、自分の下着のサイズを申告するのも気をつかうと思いますので、伸縮性があるスポーツニット生地を使って、フリーサイズで作りました。さまざまな世代の、いろいろな体型の方に着ていただいて、お腹の上の部分はゴムではなく紐にして、サイズを調整できるようにしています。何日間も頻繁に洗濯できなくても菌が増えないだけでなく、むしろ減っていくよう特殊な加工も施しています。災害の後は、非日常の空間で生活していかねばなりません。衛生的で、気持ちの面でも負担がないようなものにしたいと思っていました。

 

── どのような声をいただいていますか。

 

表さん:自治体の防災担当の職員の方からは、フリーサイズなので「配りやすくて助かった」と言われました。能登半島地震のあとに避難所で着用された方からは、「3〜4日着用しても匂いがしない」「服の下に衛生的なものを身につけているということが安心に繋がった」という声が聞かれました。