目を背けていた不妊治療に飛び込み子どもを授かるまで

── どのような段階を踏んで治療されたのですか?
高畑さん:夫が紹介してもらったクリニックは「PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)」を実施している医院だったんです。PGT-Aというのは、体外受精によって得られた胚の染色体を事前に調べ、移植に適した受精卵を選択することができる医療技術。これは胚移植の妊娠率を上げ、流産率を下げることを目的としています。国内では日本産科婦人科学会の特別臨床研究の一環として、条件を満たした施設でしか実施されていません。また、対象となる夫婦にも条件があり、そのなかの「2回以上流産、または死産を経験している夫婦」に私たちは当てはまりました。
PGT-Aは不妊治療のステップで言うと5段階中の5段階目、最後の手段に近いんです。通常の順序で治療を進めると、タイミング法、人工受精、体外受精、顕微授精、と段階を経て数年かかってやっと辿り着くような治療法でした。紹介してくれたご夫妻が、2回の流産を経験している私たちの事情をふまえ、医師に「ぜひこの二人にもPGT-Aを」と伝えておいてくれたことで、無知な私でしたが最初からこのステップに入りました。
── そこから妊娠するまではスムーズに進んだのでしょうか?
高畑さん:いやいや。ハードルは高かったです。合計4回、計28個の卵子を採取して体外受精をして、PGT-Aの検査により、移植に適していると言われた胚は2個だけでした。内訳を言いますと、28個の卵子から受精できたのが25個で、そこから正常に細胞分裂が進んだのが17個、さらに凍結できる状態に育ったものが10個でした。凍結できた胚が検査のために針を刺しても耐えうる、と判断されれば、PGT-Aの検査を受けられます。その結果、2つの胚が正常胚と判定されました。他の胚は遺伝子に何らかの問題があり、体内に戻したとしても、着床しないか流産になる。つまり、うまく育たないという判定だと説明を受けました。さらに、正常胚を移植しても妊娠に至る確率は60%ほどと聞き、改めて妊娠・出産というものがいかに奇跡の連続か、ということを痛感しました。私たち夫婦はありがたいことに、その2つの正常胚で2人の子どもを授かることができました。