子どもたちにはもっと「失敗」を経験させてあげて

ゆいなさんの成長とともに、蓬郷さんの心にも余裕が生まれるようになった

── 現在は、講演活動も活発に行っていますね。

 

蓬郷さん:Instagramを始めて1年ほど経ったころから、「これまでの育児について話してほしい」と、講演会に呼ばれるようになりました。会場に来てくださる方々は、自閉症児の育児真っただなかの方から、子育てがひと段落した方までさまざま。健常児のお母さんも多く来てくださっています。Instagramを始める前から、「ゆいなとこれまで頑張ってきたことを、誰かに伝えたい」と考えていました。

 

── 講演会では、どのようなメッセージを伝えていますか?


 
蓬郷さん:
まずは、育児を「しんどい」と感じているお母さんたちに、少しでも元気を届けたいと思っています。それから、子どもに「自分でさせること」の重要さ、「失敗を経験させること」の大切さも伝えたいと考えています。

 

障がいの有無にかかわらず「子どものことをなんでもやってしまう」家庭が今は多いように感じています。私はInstagramを始める以前、学校教育をサポートする「スクールヘルパー」として約5年間働いていた時期がありましたが、当時担当してたクラスの児童が、消しゴムを落としてしまったとき、先生が拾ってくれるのをずっと待っていたことがあったんです。その光景が、今でも強く印象に残っています。きっとその子の家庭では、いつもお母さんが拾ってくれるのでしょう。私は、「自分のものは自分で管理すること」を子どもたちに教えたいですし、そうすることで、子どもの成長や自立につながると考えています。

 

また、子どもたちにはもっと「失敗」を経験させてあげてほしいとも感じています。「要領よく進めること」を教えたがる方も少なくありませんが、失敗を経験しないと、子ども自身が「こうすれば早くできる」と気づけないと思うんです。

 

以前はひとりで着替えすらできなかったゆいなも、繰り返し練習をしたことで、今では身支度を自分で済ませ、自転車で通学するまでに成長できました。子どもは、何度失敗を繰り返しても、練習を積み重ねれば必ずできるようになっていきます。そして、自分でできるようになることで、自信にもつながっていくはずです。そのことを、これからも皆さんに伝えていきたいと考えています。