鎌倉に移り住んで創作活動にもより意欲が

── そもそも鎌倉に住まいを移されたのは、どんな思いからだったのでしょう?

 

假屋崎さん:私も今年で66歳。人生の後半をどう生きるかを真剣に考えました。それまで表参道に30年近く住んでいましたが、街の景色はすっかり変わってしまいました。木々が伐採されるなかでマンションやビルが増え、息苦しさを感じるようになってしまったんです。もっと自然に囲まれた場所で、これからの時間を自分らしくていねいに暮らしたい。そうすれば、花道家になる原点だった「園芸」が思いきりできるのではと、心が躍りました。そんな思いから、鎌倉へ引っ越すことにしたんです。

 

大胆さと繊細さが共存する假屋崎さんのいけばな(花材:ユリ・愛知県田原市 / バラ・京成バラ園 )

朝は鳥の声を聴きながらテラスで朝食をとったり、日中は庭仕事に没頭したり。大好きなピアノを存分に弾くための部屋も作りました。ここで過ごす時間が、私にとっての癒やしであり、心がリフレッシュできるんです。

 

── そうした時間が創作活動へのインスピレーションにもつながっているのでしょうか?

 

假屋崎さん:そうですね。自然のなかで季節を感じながら暮らすことで、花の作品も着物のデザインも新たな発想が生まれてきます。着物のブランドを起ち上げて15年になりますが、全国の各地の展示会では直接お見立てをして売り子も務めています。

 

── エネルギッシュですね。その原動力はどこから生まれてくるのでしょう?

 

假屋崎さん:私は、過去の功績にはあまり興味がないんです。褒めていただけるのはうれしいけれど、自分では振り返ることはないですね。大切なのは「いま」と「これから」。だから手ごたえも感じたことがないんです。

 

── 華道家としての華々しいキャリアを持ちながら「手ごたえがない」とは、何だか意外です。

 

假屋崎さん:過ぎたことに執着する気持ちはまったくありません。昔の栄光より、先に進むこと、「これから何ができるか」が大事です。私はいつも即断即決の人生なんです。何事も迷わずインスピレーションを信じて決める。家を買うときもそう。「ここだ!」と思った瞬間、即決なんです。