直感を信じる人生はストレスに悩まずにすむ
── 決断するときに迷いはないのですか?
假屋崎さん:悩む時間ほどムダなものはないと思うんですよ。考え込むこと自体がストレスになってしまう。それなら直観を信じて決めたほうがいい。振り返ると、誰かに言われて迷いながら決めたことは、うまくいかないことが多かったんです。だからこそ「自分の直感を信じるべきだな」とつくづく思うようになりましたね。
── そうなのですね。即断即決を続けていれば、直感って鍛えられるものなのでしょうか。
假屋崎さん:そう思いますよ。結局、なにごとも訓練。失敗を重ねながら感覚が研ぎ澄まされていき、より本質に近づいていくと思うんです。「もうこれで完成」と思ったら、そこで終わり。そうではなく、つねに未開の地があると信じて、新しいものに挑戦していくことが大事です。個展でも「いままでと違うことができないだろうか」と、いつも模索していますね。
華道家になって42年になりますが、マンネリ感覚に陥ったことはいまだに一度もありません。大切にしているのは、「心が動くかどうか」だけです。世の中の大半の人が「いい」とする高級品でも、自分に響かなければ意味がないからです。逆に、誰も気にも留めないようなものでも、自分が「素敵だな」と思えば、それは宝物になるわけです。たとえば、100円ショップの器でも気に入れば20年、30年と使い続けますよ。
── これからの人生で、大切にしたいことを教えてください。
假屋崎さん:変化し続けることですね。過去にとらわれず、新しいものにつねに挑戦する。人生は進化し続けるものだと思っています。これからも自分の直感を信じて、躊躇せず前へ進み続けたい。どんなものが生まれるのか、私自身もワクワクしているんです。
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かつては毎週のようにテレビ出演をして注目を集めていた假屋崎さんですが、いまは創作活動に専念し、人生後半戦を楽しんでいます。そんな假屋崎さんの感性が磨かれたのは、幼少期の両親の存在。中流家庭で決して裕福ではなかったそうですが、貯金をせず、クラシックのコンサートなどの「生きた教育」に惜しげもなく投資してくれた両親のおかげで、今の假屋崎さんがあるそうです。
取材・文/西尾英子 写真提供/假屋崎省吾