発汗や荒い呼吸…何かがおかしいと思っても、「大丈夫だ」と、自分に言い聞かせてしまう。でも、それは「大丈夫じゃない」シグナルだったと話す川合俊一さん。パニック障害を経験した当時の様子は── 。(全4回中の2回)

機内でどっと汗が吹き出て呼吸も荒くなり

── 疲労の蓄積やストレスから、心の不調をきたす人は少なくありません。元バレーボール日本代表で、現在は同協会の会長を務める川合俊一さんもそのひとり。かつてパニック障害を経験されたことがあるそうですが、当時の状況を教えていただけますか?

 

川合さん:発端となったのは、2016年に奄美大島に旅行したときのことです。その直前に、日本バレーボール協会の会長としてリオデジャネイロ五輪の視察でブラジルに行っていたんですが、時差の影響で、ほとんど眠れなかったんですね。ベッドも変わり、1日1~2時間くらいしか寝られない日が続きました。ビーチバレーの試合は炎天下のなかで行われ、観戦後はグッタリ。

 

会場はとにかく広くて、移動だけでも大変でした。食欲がわかず、疲労はたまるいっぽう。そんな状態のまま日本に帰国し、その足で奄美大島へ遊びに行ったんです。体調が本調子ではなかったものの、楽しくバカンスを満喫。ただ、時差ボケで1日2時間くらいしか眠れないまま、数日間を過ごしました。

 

── 睡眠時間が極端に少なく、疲労が蓄積した状態だったのですね。

 

川合さん:そうでしたね。ほとんど炎天下にいるような状態でした。帰りの日、東京行きの直行便が台風で欠航。やむなく奄美大島から鹿児島まで移動し、そこから大阪経由で新幹線に乗ることにしたんです。異変が起きたのはそこからでした。

 

── 何があったのでしょうか?

 

川合さん:奄美大島からの航空機の機体が小さいタイプで、後方の席から前を見た瞬間、「うわ、狭い!」と感じたんです。もともと閉所恐怖症で、狭いところは苦手でした。その瞬間、突然怖くなって、どっと汗が吹き出し、呼吸がどんどん荒くなり、「なんだこれ、ヤバいぞ」と…。外に出ようとしたんですが、もう機体は動き始めていたので、どうにもできない。ただひたすら縮こまって、不安と怖さに耐えながら1時間を耐えしのぎました。

川合俊一

鹿児島空港に着いたときはホッとしました。大阪に向かうために乗り継いだ航空機はゆったりとした座席のスーパーシート。今度は「広いから大丈夫だろう」と思ったのですが、直前になって「やっぱり乗りたくない」と、不安が押し寄せてきて。そんな気持ちになるのは人生初で、自分でも驚きました。