「持つべきものは仲間」のひと言で救われた

── 壮絶な経験をされたのですね…。

 

川合さん:しかも、18時間も「死んだ」と思って眠り続けていたせいか、その後も脳の活力がまったく戻らない状態だったんです。すべてどうでもよくなってやる気が起きないし、ボーッとして生きる気力がわかない感じ。じつは以前、パニック障害になった経験があるのですが、そのときの感覚に似ていました。3日間は声を出すことを禁止され、気力も戻らないままでしたね。

 

川合俊一
現在は日本バレーボール協会会長としてJOC認定競技別強化センターの視察など飛び回る日々

体調が戻ったのは数日後のこと。バレーボール教室の予定があって、その前日の打合せで、元アスリートの指導者たちと会う機会があったんです。いつもだとお酒を飲むのですが、さすがにそんな気分になれず、事情を話してお断りしたんです。でも「飲んだら元気になるかもよ?」と仲間に励まされて、試しに1杯だけ飲んでみたら、本当に元気が戻ったんですよ(笑)。

 

── よかったですね。その経験から3回目のポリープ手術では全身麻酔を避け、局所麻酔にされたとか。

 

川合さん:2回目の経験があまりにも怖かったので、局所麻酔で手術できる病院を探してもらったんです。全身麻酔はもう2度としたくないですね。

 

── それにしても、なぜポリープができやすいんでしょう?

 

川合さん:ずっとバレーをやってきて、大声を出すのが当たり前だったので、のどに負担がかかっていたのかもしれません。でも、手術をしてからは、意識的にのどの変化に気を配るようになりましたね。いま、こうして生きていられること、ふつうに呼吸ができること。これまで当たり前だと思っていたことが、ありがたいものだと実感できたのは、病気のおかげかもしれません。

 

 

3度のポリープを乗り越えた川合俊一さんですが、かつてはパニック障害を経験したことも。機体が小さい航空機に乗ったときに汗が吹き出て、呼吸が荒くなり…。かつてバレーでつらい練習にも耐えてきたことから「精神力でどうにかなるだろう」と考えたこともあったそうですが、その考えは甘かったと当時を振り返ります。症状がなくなったいまでも、お守り代わりに薬を持ち歩いているそうです。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/川合俊一