全身麻酔。経験した人なら、ちゃんと目が覚めるのだろうかと、一抹の不安を覚えることもあるはずです。そんななか、ポリープ手術の全身麻酔で18時間も起きなかった川合俊一さんの恐怖体験。たしかにこれは怖い経験です。(全4回中の1回)

ポリープ手術で死の恐怖感を味わう体験を

── 元バレーボール日本代表で、現在は日本バレーボール協会の会長を務める川合俊一さん。これまでに3度、のどのポリープ切除手術を受けられていると聞きました。最初の違和感から手術までの経緯を教えていただけますか?

 

川合さん:そうですね。3回目にもなると「またできたな」という感覚がわかるようになりました。最初はのどに何かが詰まっているような違和感から始まり、徐々に声がかすれてきたり、出しにくくなったりするんです。医学的には根拠がないと言われますが、自分ではその変化を感じ取っています。

 

── どんな流れで手術は行われたのですか?

 

川合さん:ポリープ手術は基本的に全身麻酔で行います。1回目の手術では30分ほどでサクッと終わったので、2回目も簡単に終わるんだろうと、たいして心配をしていなかったんです。ところが、想像以上に大変なことが起こって、死の恐怖を経験しました。

 

── 死の恐怖とは、いったいどういうことでしょう? 

 

川合さん:手術がスタートしたのが昼の1時。ふつうなら1時半頃には、麻酔が切れて目が覚めるはずでした。ところが、目を開けて時計を見たら「7時30分」。6時間半も寝ていたのか…と思ったら、夜じゃなくて、翌朝の7時30分だったんです。つまり、約18時間も眠りつづけていたわけです。

麻酔後に呼吸が…目覚めるのに18時間

── 18時間も、ですか!?

 

川合さん:「いったい何が起きたんだ!?」と、混乱しました。手術が終わり、そろそろ麻酔が切れて起きるはずというタイミングで看護師さんが、僕が呼吸をしていないことに気づいたらしいんです。自力で呼吸ができない状態だったため、急遽、人工呼吸器を装着し、肺に酸素を送り込む処置が行われました。そして、目が覚めた時には18時間が経過していました。

 

── ご自身は覚えていないのですよね…?

 

川合さん:ただ、言われてみると、うっすらと呼吸が苦しかった記憶はあるんです。のどに何かが詰まっていて、まったく息ができないし、体も動かない。パニックになり、意識があるかないかのなかで「もしかして、死んだのか…」と本気で思っていました。

 

その一方で、「保険には入っていたよな」「もう仕事など全部やらなくていいんだな」などと妙に冷静な自分もいて…。のどから出血もしていたようで、それを見た奥さんが「血を吐いた!」と思い、ショックで腰を抜かしたらしいです。驚かせてしまって、申し訳ないことをしました。

 

── 目覚めてからは、スムーズに回復されたのですか?

 

川合さん:いえ、目が覚めた後も異変が続いていました。さらに恐怖だったのは、指につけていたパルスオキシメーターが「ピーピー」鳴り続けていたことです。呼吸しないと血中酸素濃度が下がって警告音が鳴るんですね。看護師さんから「川合さん、呼吸してください、呼吸!」と何度もうながされました。

 

長時間、自発的に呼吸をしていなかったから、体が息をすることを忘れていたらしいんです。「しばらくは呼吸を意識して過ごしてください」と言われたのですが、意識して呼吸をしないといけないなんて、生まれて初めての経験でとまどいました。お医者さんからは「時間がたてば戻るだろう」と言われたものの、「寝ている間はどうなるの!? 呼吸を忘れて死ぬんじゃないか?」と、不安でたまりませんでした。