現場でオナラが止まらないときは

── 自分の「弱点」だと思っていた部分をオープンにしたことで、HARUさんの人生はどんどん好転していったのですね。
HARUさん:そうですね。やはり「自分の弱さを話すと、相手も話してくれるのだ」と気づけたことが大きな発見でした。IBSの症状は今でもゼロになったわけではありませんが「話してもいいんだ」「わかってくれる人がいる」という感覚があるだけで、心がずっと軽くなりましたから。今の私は弱さを見せられることも、強さのひとつだと感じています。
自分の悩みを誰かにシェアすると、相手も安心して悩みを話してくれるんですよね。そうすると心の距離もぐっと縮まる。その感覚の積み重ねが、自分の自信にもつながっていきました。
── 最近はIBSの症状に変化はありましたか。
HARUさん:今も症状はゼロではありませんが、食生活を日々気をつけながら暮らしているので、ピーク時に比べるとずいぶん症状は軽減されました。いちばん大きなところだと食事ですね。IBSの症状を悪化させるにんにく、ニラ、玉ねぎ、きのこ類などの高FODMAP食材(消化されにくく腸内細菌によって発酵し、ガスが発生しやすい糖質(FODMAP)を多く含む食材。人によって原因となる食材が異なる)に該当するものは控えるようにしています。
皮肉なことにこれらの食材は私が実家にいたころに母なりに気をつかって食べさせてくれたものばかりなんですね。母は私のためにビオフェルミンを常備してくれたり、「おなかにいいから」とオリゴ糖を使ってくれたりしたのですが、IBSの特性上、すべてが裏目に出てしまっていた。
もちろん悪気があってのことではないため恨むような感情はいっさいありませんが、病気の正しい知識を持つことの大切さは実感しています。今は同居しているパートナーがIBSのことを理解して、日々の自炊でも協力してくれていることが心強いですね。
とはいえ、いまでもたまに「現場でオナラが止まらない」ときがあったりするんですよ。ただ、そんな場面でもしっかり深く吐く呼吸を繰り返して、姿勢を正すようにすると、IBSの症状がやわらげられるんです。そんなふうに自分なりの対処法、自分の体のトリセツがもうでき上がってきたので、ずいぶんと気持ちが楽になりました。
ほかにも、疲れを溜め込まないように睡眠をしっかりとる、セルフケアをするなども心がけていますが、やっぱり運動の効果は大きいですね。ずっと慢性的な便秘だった体質が、ジムに通って体を動かすようになってからはほぼ毎日、多いときは日に2回もきちんと便通があるようになりました。体を動かすようになったことで、血行がよくなったのが影響しているんだと思います。
── 最後に、HARUさんと同じように「他人には言いづらい体の悩み」を抱えている人にアドバイスをお願いします。
HARUさん:まずは、信頼できる身近な誰かに悩みを打ち明けてみることをお勧めします。このとき、大事なのは相手の人間性を見極めること。仲がいい相手なら誰でもいいわけではなく、「この人であれば悩みを受け止めてくれそうだ」と思えるような人をしっかり選んだほうがいい結果になると思います。
取材・文/阿部花恵 写真提供/HARU