下痢や便秘、オナラが止まらないなどの症状が現れるIBS(過敏性腸症候群)。10代のころからその症状に悩まされてきたHARUさんですが、20代後半で初めて人にその悩みを打ち明けたことで、IBSとの向き合い方が変わっていきます。(全2回中の2回)

私だけ元気になるのはもったいない!

親友にIBSを打ち明けたHARUさん

── IBS(過敏性腸症候群)のため、中学生の頃から多いときは1日に500回ほど「オナラが止まらない」症状に悩んできたHARUさんですが、誰にも言えなかった体の悩みをどんなふうに周囲に発信できるようになったのでしょうか。

 

HARUさん:20代後半にIBSオフ会で同じ悩みを持つ人と繋がるようになり、親友にもずっと言えなかった悩みを打ち明けて以降は、スピーチ研修などでもIBSをテーマに自分から話せるようになりました。

 

会社員を辞めて、フリーランサーとしてホテル開発に携わる本業のかたわら、副業でバーの1日店長をしていた時期があります。そのときにお客さまたちに自己紹介を兼ねてIBSのことを話すことがあったのですが、みなさんリテラシーが高い人ばかりで、バカにされるようなことは一度もありませんでした。

 

話すことで応援や共感を得られ、自分に力が湧いてくるという実感が日増しに強まり、「私だけが元気になるのはもったいない!」と思うようになりました。

 

社会人になってから、考え方が変化したことが関係あるかもしれません。学生時代は闇雲に自分を追い詰めてしまうクセがあったのですが、社会経験を積んでからは症状が出ても落ち込まず、冷静に対処できるような意識へと少しずつ変わった自覚があります。

 

── IBSである自分を、冷静に見られるようになった?

 

HARUさん:「IBSで臭い自分」と「仕事を頑張る自分」は別のものだと、とらえられるようになったからでしょうか。仕事は成果や姿勢を評価される世界であって、それは私の体調とは切り離していい。そう気づいたからです。

 

また、直接関係があるかどうかは定かではないのですが、20代後半になってIBSの症状が落ち着いたひとつの要因として、仕事が忙しかったことも関係しているかもしれません。

 

10代のころは他人の目が気になって「恥ずかしいから学校のトイレでオナラをしたくない」と考えていましたが、大人になってあまり気にならなくなったんですね。あまりに仕事が忙しすぎて、「我慢している場合じゃない!もう気にしない!」という境地になったので(笑)。

 

── そこからIBS当事者が繋がる団体「IBS place」を立ち上げるまでにはどんな経緯があったのでしょう?

 

HARUさん:ある友人にIBSのことを打ち明けたとき、「それって社会課題じゃないかな」と俯瞰的にフィードバックしてもらったことで、一気に視野が広がりました。さらに、別の人からも「あなたがやらなくて誰がやるんですか?」とあと押しされたのが決め手となり「IBSで悩む人の場所をつくり、IBSの認知を広める」という理念を掲げて2021年に「IBS place」を設立しました。

 

IBSはデリケートな領域の悩みですから、過去の私のようにひとりで抱え込んでしまう人が多いんです。そういった当事者の支えとなる居場所をつくることを目的としています。設立年の2021年だけでも講演を含めて約500人にIBSのことを伝え続け、活動5年目の現在までに1000人以上とつながってきました。