「オナラした?」とクスクス笑われて
── 社会人になってからIBSの症状に変化はありましたか。
HARUさん:中高生のころよりはややマシになったという程度で、不発弾を抱えているような怖さはずっとありました。実際、新入社員研修や勉強会の場面で、「オナラした?」とクスクス笑われたり、「臭い」と言われたりしたこともあります。
「自分の体ときちんと向き合おう」と決意したのは、27歳のとき。そのころにはIBSについての情報も世間には増えていましたが、母以外には誰にも打ち明けたことがないままでした。
でも、あるとき勇気を振り絞って、誰にも言えなかった「止まらないオナラ」の症状を親友に電話で大泣きしながら打ち明けてみたんです。彼女は私の話をしっかり受け止めて、最後に「話してくれてありがとう」と言ってくれました。
それをきっかけにIBSについて話す機会を少しずつ増やしていくなかで、共感されたり、「私も実は」と打ち明けられたりすることが増えていきました。「誰にも言えない」と思っていた悩みが、実は誰かと共有できるものだった。そう気づいたとき、肩の力が少しずつ抜けていったように思います。
自分のウィークポイントをさらけ出すと、相手も自然と自分の弱さや悩みを話してくれる。じつはみんなそれぞれに悩みを抱えていて、誰しもが何かに苦しんでいるんだ。「私だけがつらいわけじゃない」と実感できたことは、私の人生においてとても大きな気づきでした。
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自分の弱さを人にさらけ出すことで肩の力が抜けていったと話すHARUさん。その経験をもとに、2021年にはIBS当事者が繋がる団体「IBS place」を立ち上げます。現在は活動5年目、これまでにのべ1000人の方に、IBSに関する講演を行うなど、と繋がりを作ってきたそうです。
取材・文/阿部花恵 写真提供/HARU