「真以子って普通に彼とけんかするんだ」と驚かれ

久下真以子、羽賀理之
婚約中。東京パラリンピックの代表メンバー発表会見にて。選手とメディアという立場で、同じ目標に向かった

── 羽賀選手とおつき合いに至るきっかけは何だったのですか?

 

久下さん:2018年にオーストラリアで車いすラグビーの世界選手権があり、日本代表が初めて優勝したんですね。彼がお土産を買ってきてくれたので、「お祝いの場を設けましょう」と初めてふたりで食事したのがきっかけでした。その後、東京パラリンピックが近づくにつれて取材の機会が増えましたし、しょっちゅう顔を合わせるようになって、距離が縮まりました。築地でお寿司を食べたら次は漁港が近い小田原へ行こうとか、ドライブ中に車中で聞く音楽で盛り上がって次はカラオケへ行こうとか、どんどん2人で会う次の予定が決まっていき、お互い気が合うことを意識し始めたんだと思います。

 

── 車いすユーザーの方とおつき合いするにあたって、戸惑いはありましたか?

 

久下さん:2019年、正式におつき合いしてくださいと言われて「はい」と答えたものの、すぐに同棲することになったので、「一緒に住んだらどうなるのかな?」という不安は少しありました。夫は、専門学生のときに交通事故にあってけい椎を損傷したため、胸から下がまひしていて、手は動かせますが不自由です。いちばん戸惑ったのはトイレでしょうか。ときには3時間くらいトイレにこもることもあるので、私はその間、トイレに行けず、外のトイレを使うということがあります。あとは、床に物があると車いすで通れないので、小まめに片づけをしなくちゃいけないんだ、という気づきはありました。ただ、着替えや食事など日常生活でパートナーが介助しなくちゃいけないとか、困ることがあるかというと、そうでもないです。

 

── つき合うと同時に同棲されたのですね。

 

久下さん:夫はずっと実家暮らしだったのですが、おつき合いする前に、たまたまひとり暮らしをするためにマンションの一室を買っていたんですね。それがきっかけで一緒に住むことにしたんです。

 

── お友達の反応はいかがでしたか?

 

久下さん:よく「真以子って、普通に彼とけんかするんだ」と驚かれます。「普通のカップルだからけんかもするよ」と答えると「障がいがある人に言い返してもいいんだね」と言われたこともあります。障がい者=気をつかわなくてはいけない人、というイメージなんでしょうね。たとえば料理も私ひとりがやるわけではありません。夫は包丁は使えないけどハサミで切る、焼く、ゆでるといったことは分担できるので、「お肉焼いてね」など普通にお願いします。ひとり暮らししようとしていたくらいなので、大抵のことはひとりでできるんですけど、身近に車いすユーザーがいなければ想像がつかないんだと思います。