テレビで放送されるには「食べ始めがキモ」な訳
── 大食い大会に出演するにあたり、意識していたことはありますか?
もえあずさん:当時は「売れたい」「テレビに映りたい」という気持ちが強かったんです。だから、少しでもテレビに映るように工夫していました。こだわっていたのは、スタートダッシュをかけること。大食い大会では何皿も料理が出てきますが、1皿目は絶対、最初に食べ終わるようにしていました。冒頭は番組のつかみでもあるので、たとえ勝負に負けたとしても、確実にテレビで放送してもらえるんです。わんこそば1060杯、ケーキ5キロなど、これまで本当にたくさんのものをおいしく食べてきました。
そして赤阪さんが言われていたように、最後は精神力が勝敗を分けると感じます。私の強みは「自分はできる」と信じる心かもしれないと思っていて。やっぱり大食い大会だと1種類のものを食べ続けるから、途中で飽きたり、食べすぎて苦しくなったりするときもあります。でも、しんどいのは私だけではないんです。ほかの選手も同じだと思うと「ここで頑張れば勝てる、むしろチャンス!」と、思っていました。こうしたメンタルは大食いで培われたのかもしれません。すごく鍛えられた気がします。

── ほかのフードファイターたちとはどんな関係ですか?
もえあずさん:大会のときはライバルだけど、ふだんは仲がいいです。ほぼ同期のますぶちさちよちゃんとは大会で出会って10年以上経ちますが、すごく気が合います。毎年クリスマスとお正月はさちよちゃんの実家へ遊びに行く関係です。
ふたりで食事に行くことも多くて、以前、一緒に焼き鳥の食べ放題に行ったことがあります。すごくおいしくて夢中になり、ふたりで店中の焼き鳥を食べつくしてしまいました。お店の人から「もう何もありません」と言われ、申し訳なくなってしまいました。それ以来、食べすぎて迷惑をかけないよう、食事前に「これからお店に食べに行っても大丈夫ですか?」と、確認するようにしていた時期があります。
ふらっとふつうに食事に行くと、お店の人が「大食いの人たちが来た」と気づいてくれることもあるんです。「好きなだけ食べてください」と、歓迎してくださるところも多いです。だからありがたく、少しは店員さんの顔色をうかがいつつ(笑)、おいしくいただいています。
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大食いアイドルとしての地位を確立したもえあずさんですが、ネット上では困ったデマに悩まされたそう。健康診断をするテレビ番組に出演したところ、またたく間に「糖尿病」と報じられたそうです。その真相は?と本人に聞くと「違いますよ」と明確に否定していました。大食いの方は健康が気になりますが、ひと安心ですね。
取材・文/齋田多恵 写真提供/もえのあずき