「前のおにいさんのほうがよかった」と抗議の手紙が
── その後「7代目・うたのおにいさん」として、いきなり全国区の有名人に。
坂田さん:北海道の両親はすごく喜んでましたね。でも僕としては、おにいさんとしてテレビに出ているものの、戸惑いのような気持ちがすごくありました。
── それはなぜでしょう?
坂田さん:僕はもともとギター少年で、ロックバンドでデビューしたから、正規の音楽教育を受けてないんです。ところが、オーディションで「うたのおにいさん」に決まっちゃって。それが12月で、交代は翌年の4月。だから3か月間、ひたすら研修、研修の日々だったんですよね。
── おにいさん研修。
坂田さん:そう。発声はピアノの横に立って、ほんとに基本のきから。あとはダンスね。『おかあさんといっしょ』の歌は、必ず振りつけがあるんですよ。でも僕はダンスがド下手で、右手右足が一緒に出ちゃうタイプ。だから頑張ってレッスンを受けるけど、家に帰ったらもうグッタリ。そうこうするうちに4月になり、つけ焼き刃の状態でおにいさんデビューの日を迎えたわけです。

── 新おにいさんとしての評判はいかがでしたか?
坂田さん:そりゃもう、さんざんよ。僕の前任は林アキラさんだったんですけど、彼は東京芸大の声楽科出身で、エレクトーンを弾きながら歌うわ、芝居もできるわ、とにかく上手な方だったんです。それがある日、いきなり僕に変わったでしょう。
僕は腹をくくって、おにいさんとして精一杯やってるつもりなんです。でも、テレビを観ている皆さんは「おさむおにいさん? 誰これ?」状態で。
── たしかに、慣れ親しんだおにいさんが交代すると、初めは違和感があるかも…。
坂田さん:実際「前のおにいさんのほうがよかった」って手紙もずいぶん来たしね。だから、自分がおにいさんとして、番組にうまくハマっていないんじゃ…という居心地の悪さは、ずっとありました。ただ、そんな僕を支えてくれたのは、周りの共演者とスタッフさん、そして何よりもやっぱり子どもたちなんですよ。だんだん「おさむおにいさんがすき」という手紙もいただくようになってね。そしてある収録で「あぁ、自分はものすごく貴重な時間に立ち会ってるんだ」と痛感したんです。