店舗探しもSNSでの集客もひとりで始めて

── その違和感というのは、どういうものだったのでしょう?

 

松本さん:「松本莉緒」として求められる役割に応えようとするあまり、作られた自分を演じ続けているような感覚があったんです。子どものころから、大人の期待に応えようとムリしてしまうことが多く、自分の人生のはずなのにどこか現実感がないというか、「松本莉緒」という別の人の人生を生きている気がしていて…。「いまの仕事は本当に心から好きなことなのだろうか」と、自問する日々が続き、自分に自信が持てなくなって、行き詰まりを感じることもありました。

 

そんなとき、再びヨガを始めたことで、自分を覆っていた鎧のようなものが少しずつはずれていき、偽りのない本来の自分に立ち返ることができたんです。

 

── ヨガの道を選ぶ決断に迷いはなかったのですか?

 

松本さん:まったくなかったですね。芸能界がイヤになったからヨガを選んだわけではありません。ヨガは昔から私にとって身近な存在で、自分を本来の姿に戻してくれるもの。自分の意思で、自分のためにやってみたいと思えるものだったからこそ、ヨガの道を選びました。

 

今年で1周年を迎えた「Slow Yoga Studio Niigata」は開放的な空間でこの大人数でも余裕の広さ

── 2014年にヨガの国際ライセンスを取得し、ヨガインストラクターとしての活動をスタートされました。どのようにキャリアを築いていったのでしょう?

 

松本さん:芸能活動と並行しながら、自分でヨガスタジオに営業をして、講師として雇ってもらいました。最初の数年は、「松本莉緒」という名前に惹かれて来てくださる方が多かったと思います。でも、私にとっては、それまで応援してくださった方と直接お会いできる貴重な機会で、本当の自分を知ってもらえるチャンスでもありました。

 

どんな思いでヨガに向き合っているのか、ていねいに伝え続けてきたつもりです。名前に頼らず、ひとりのヨガインストラクターとして何を伝えられるのか、どうすればまた来てもらえるのか。模索しながら一歩ずつ歩んできました。

 

── 2019年には、東京の府中でヨガスタジオをオープンされています。

 

松本さん:自分が育った町で、スタジオを持つのがずっと夢だったんです。ちょうどすてきな物件に出会えたタイミングで、ヨガスタジオの運営会社に「一緒にやりませんか?」と提案し、ディレクターとしてスタジオ運営を任せてもらえることになりました。SNSを使って集客も頑張っていましたね。あるファンの男性は、最初はまったくヨガには興味がなさそうだったのに、通っているうちにすっかりヨガにハマり、やがて別の先生のクラスにも通いだして。私のレッスンには来なくなっちゃいました(笑)。