人気漫画家の東村アキコさんは子どもの進路について「高1の終わりに息子とじっくり話をした」そうです。「やりたいことを見つける手助けはしてあげたい」と話す理由とは。

ごっちゃん19歳「韓国で大学生」の現在

── ご自身の子育て体験を描きベストセラーとなったエッセイ漫画『ママはテンパリスト』には幼少期の息子さん、ごっちゃんが登場します。その息子さんは現在19歳になられたそうですね。

 

東村さん:息子が小さいころは仕事ばかりしていたのですが、10歳を過ぎたあたりから意識して一緒に過ごす時間を作るようにしてきました。 

 

東村アキコさん
姿勢も美しい!茶道で思考がリセットされるという東村アキコさん

小学校低学年くらいまではありがたいことに連載のお仕事もいくつかあり、かつ断れない性格なので (笑)、多いときで月150枚の原稿を描いていました。でも途中で「息子と一緒の時間をもっと作らなきゃ!」と思い、働き方を改めました。自分の記憶をさかのぼってみてもそうですが、やっぱり子どもって大きくなってくると覚えていることが多くなってきますよね。「俺はずっとほったらかしにされて、ママは仕事をしてた」となったらまずいなと。

 

── 息子さんとは何をして一緒に過ごしたのですか。

 

東村さん:一緒に映画や舞台を観に出かけることが多かったです。息子が高校生のときは、ちょうどコロナ禍で。あのころはステイホームでみなさん家にいましたよね。もしコロナ禍じゃなければ、きっと親より友達と…いう年齢だったと思うんですが、家で過ごす時間が必然的に多かったので、配信サービスで一緒に映画やドラマを観ては、感想を語り合っていました。

 

── 息子さんは現在、韓国の大学に通っているそうですね。

 

東村さん:はい、韓国に留学しています。息子が憧れる映画監督が卒業した大学を自分で希望して受験しました。コロナ禍で韓国ドラマの『梨泰院クラス』にハマったのが影響して、韓国の映像業界で働いてみたいと思ったみたいです。「韓国のコンテンツの勢いがすごいから、現地で学ぶのもいいのかもね」という何げない会話から始まって今に至ります。

 

── 当然、授業は韓国語ですよね。

 

東村さん:コロナ禍のとき、オンラインで韓国語を学んでいたら、高校3年生には話せるようになっていました。その後、韓国語検定1級を取って。息子の語学力はコロナ禍で生まれた時間のおかげですね。

 

── 親元を離れて大学生活を送っているそうですが、息子さんの様子はいかがですか。

 

東村さん:すごく楽しいらしいです。韓国は近いので夏休みや連休に帰ってくることができますし、私もときどき会いに行っています。これは韓国の大学ならではですが、一緒に入学した同級生の男の子がみんな兵役でいなくなって、女の子だけ残ったと言っていました。わかっていたことではあるんですけど、仲良くしていた子と卒業する時期が変わってくるというのはやっぱり日本の大学生活とは違いますね。

 

── 大学生になった息子さんとはどんな話をするんですか。

 

東村さん:「日本は、素晴らしいものを生み出す力はあるのに、外に発信していくのは苦手だよね。それに対して韓国はそれがものすごくうまいよね」などという話をしています。韓国はアイドルやファッションやメイク、そしてグルメなんかも、あらゆるものが世界に影響を与えて、真似されています。そんな風にアニメや漫画以外にも、日本から発信できるものを作れたらいいねと、息子とはそういう話ばかりしています。

 

── 息子さんは、東村さんの仕事をどうご覧になっていますか。

 

東村さん:私の友達も漫画家が多いので、特別な仕事だとは思っていないと思います。それに、そう思われないように、華やかな場所には連れて行かないようにしていました。ホテルで行われる豪華な出版社のパーティーに初めて一緒に行ったのは、19歳になってから。だいぶびっくりしていましたね(笑)。映画もそうですが、私も創作の仕事をしているので「親と映画やドラマの話を深くできるのはラッキーだった」と言っています。