元体操日本代表として2度のオリンピックに出場した寺本明日香さん。2022年に引退後は大学の教員、体操部の監督を務めていますが、今年2月には愛知県のフィギュアスケートの大会に出場。異例の挑戦には大きな反響がありました。(全2回中の2回)
セカンドキャリアに大学の監督を選んだ訳

── 現在、寺本さんは至学館大学の体操競技部の女子監督、健康科学学部の助教を務めています。もともと指導者になりたいとは考えていたのでしょうか。
寺本さん:体操選手の引退を考えたときはコーチングに携わりたいとは思っていませんでした。引退後1年程度はフリーでいいかなとか、いろいろな選択肢を考えたり、行動したりした結果、現状に至るという形です。
── 就任して約2年半が経ちました。監督という職業は初めての経験だと思いますが、やりがいや難しさをどのように感じていますか。
寺本さん:体操競技部としてすでに実績がある大学で指導することで学べるものはとても多いですし、経験のある先生のもとで多くの勉強ができたかもしれません。そうした大学と比べると、至学館の体操競技部の実績はまだまだこれからという段階ですが、監督を務めているから練習時間や内容もすべて決めることができます。イチから自分が作りあげられるという点はとても魅力的に感じていますし、自分としても、そういった思いがモチベーションになりそうだからです。
ただ監督になったばかりのころは、現役時代に自分がやっていたレベルとは違ったのでギャップを埋めるのに少し時間がかかりました。練習メニューひとつとっても、学生にやってほしいことと実際にできることにギャップがあったり…。「早くやりなよ」とか「なんでできないの」という言葉を知らないうちに投げかけていたことがありましたね。
── まだまだ模索する日々でもあるとおもいますが、監督としてのこれからの目標やどういった指導をされていきたいと考えていますか。
寺本さん:卒業する学生たちが「至学館に入ってよかったな」「至学館で体操をやれてよかったな」と思えるような部活づくりをすることが今の目標ですね。
── 競技者時代とは異なる指導の大変さを感じるなかで楽しさを感じるのはどんな瞬間でしょうか。
寺本さん:今29歳なんですが、一緒にやっているコーチが28歳、外部コーチが27歳とスタッフがみんな20代なんです。学生とも比較的年齢が近いといえると思います。10歳程度は離れていますが、これほど若い指導者で構成している大学はほかにはないと思います。それを強みに、学生が話しやすい、相談しやすい環境を作りあげているところです。そこで大切にしているのは指導者から学生へ一方的にならないこと。練習の内容も学生の意見を踏まえて、コミュニケーションを取りながら組み立てるようにしています。