体重管理で学んだ「心のマネジメントの重要性」

── 大学以降は自炊されていたということですが、食事をする際はどういった点に注意して体重を調整されていましたか?
寺本さん:私が通っていた中京大には食堂が2つあって、1つは丼ものやうどんなどのメニューが多く、もう一方の食堂はきんぴらごぼうやおひたしなど副菜が多かったので、後者で、いつも栄養バランスを考えながら昼食を摂っていました。ただ、大学1年生のときは授業の合間のお昼休みに体操用具をセッティングしたりする仕事が多かったので、ご飯を食べる暇もなく授業に入ることも多々ありました。
── 食事の管理でいちばん苦労されたのはどんなことでしたか。
寺本さん:東京オリンピックの選考会を控えていた時期、ちょうどコロナのころだったと思いますが、食事に関してかなり細かく管理していたんです。たとえば栄養のバランスなど、今まで気をつけていなかった部分にも気をつけるようになって、いろいろ学べば学ぶほど、世の中にある食べ物は全部ダメとか、添加物はダメみたいな感覚になってきてしまったんです。余計な情報を入れすぎてしまったからかもしれません。
── 必要以上に過敏になってしまったんですね。
寺本さん:たとえばコンビニによく売っているサラダパスタやパリパリサラダは脂質が多いし、焼き肉もエネルギーになるけれど塩分過多、脂質過多になるから要注意、というような考えになっていましたね。スーパーに行っても買うものは、レタス、きゅうり、刺身、納豆、卵、豆腐だけ。豆腐も、たとえば麻婆豆腐にすると脂質過多になるから醤油をつけて食べるしかなくて。そういったものを食べることが日々のルーティンになっていて、いつも同じものばかりを食べていたような気がします。でも、そうやって管理しすぎたので疲れてしまってすごくストレスを感じるようになっていました。
このとき栄養に関して学んだことはたくさんありましたけど、心のマネジメントができていなかったのが失敗というか、反省です。少しシビアにやりすぎていたように思います。体重制限でいちばん気をつけなければいけないのがストレスなのに。当時はそれに気づけず、むしろ、目指していた東京オリンピックまで「あと残り少しだから頑張ろう」と自分を奮い立たせていました。
── 食事を厳密に管理するなかで我慢していたものもあると思いますが、ご自身のなかで決めていたルールは何かありましたか。
寺本さん:コンビニやデパートに行ってもお菓子にはお金を使わないと決めていました。ひと通り、菓子を凝視して目に焼きつけたり、ショーケースに入ったケーキを眺めて帰るんですけど、見ることで食べた気になれるというか。でもいつも現役生活が終わったら食べたいな、おいしそうだなと思いながら見ていましたね。だからか、早く引退したい、体操を早く辞めて好きな生活がしたいと思うようにもなっていました。