現役引退後に解禁したのは「からあげクン(笑)」

── 現役生活を終えたとき、いちばん最初に解禁した食べたものはなんでしたか。

 

寺本さん:からあげクンです(笑)。コンビニのレジの横にあるホットスナックや揚げ物のコーナーは現役時代にほとんど手を出したことがありませんでした。そのときが何年ぶりだったのかなというくらいでした。すごくおいしかったです。

 

── 現役時代シビアに体重管理されていた経験が引退後の生活で活きていることはどんなことでしょうか。

 

寺本さん:今、至学館大で大学生を指導しているんですが、実は食事制限や体重はまったく管理していないんです。毎日体重に乗ることはすごく大事なことだけど、それも義務づけてはいません。1か月に1度インボディ(体成分分析)をして結果は見ていますが、何も言わないですね。ただ、なぜ体重を減らさなければいけないのかを気づかせるために、「この技がやりたいのなら絞らないとできないよね」というようなアプローチでは伝えています。結局、その先は選手たち次第なので。絶対にやりなさいとは私からは言わないです。

 

── 現役時代の経験を経て次世代にどんなことを伝えたいと思っていますか。

 

寺本さん:これまで話したことはあくまで個人の感想で、ほかの方がどうかということではありませんので、その点は改めて前置きしたうえで、次世代へ伝えたいことですが、成長期の選手や女性はサプリメントなどに頼らず、タンパク質にしても炭水化物にしても食事で補ってほしいですね。摂食障害に苦しむという話も今はよく耳にしますが、追い込みすぎるのはよくないですし、なによりもストレスがいちばんの天敵です。「食べたい」と感じるということは体が欲しているという証拠なので、氾濫する情報にまどわされすぎずに気持ちを楽にしてほしいと思います。

 

 

現役時代、みずからの意思で食事管理をしていたからこそ現在指導する学生には食事管理の大切さを自ら気づいてほしいと考えている寺本さん。自発的に取り組むスタンスは今も変わらず続いています。そんな寺本さんは指導者、教員の仕事の合間を縫って異例の挑戦、新しい形の体操大会を運営するなどますます精力的に活動しています。

 

取材・文/石井宏美