オーディションで感じた「差別」
── たしかに。今でこそ広く知られている濱田さんですが、キャラクターや存在が世間に認知されるまでに苦労したことはありますか?
濱田さん:僕が芸人になるまで、テレビのバラエティには、障害のある人がまったくと言っていいほど出ていませんでした。その理由は、「障害のある人にはおもしろい人がいないから」なのか、「テレビ局がそういう人たちを排除しているから」なのか?それがわからなかったんですよね。もしも後者なら「ネタやトークを頑張って磨いても、僕は芸人としてやっていけるんやろうか」という不安がずっとありましたね。

── 芸人として知られるようになって、その不安は払拭されましたか?
濱田さん:R-1で優勝して少しはやわらぎましたが、払拭は今でもされてないです。デビューして2、3年目くらいのころ、明確に「差別をされた」と感じることがあって。それ以来、「テレビってどうなの」という気持ちがどうしても拭えないんです。
── どんな差別があったのですか?
濱田さん:劇場の出番をかけたオーディションのとき、「目が見えない」ことを理由に落とされたんです。その審査員は「劇場での出番は、ネタだけじゃなくてゲームなどをやるコーナーにも出演せなあかん。ジェスチャーゲームもあれば、フリップに大喜利の答えを書くものもあって、目が見えないお前にはできひんやろうから、僕はお前を推薦しない」と。
「こいつ、見えてへんからできひんやろうな」って思うことはもうしょうがないと思っています。僕だって周りの人にそう思うことがありますから。でも、それを目の前の本人に、態度でもって強制したり強要したりするのは差別だと僕は思うんです。今回の場合は、その審査員から「目が見えてないことでオーディションに通さない」という強制をされたので、僕の中ではこれは完全に差別です。
── それを直接本人に伝えるとは…。
濱田さん:それからしばらく経って、オーディションの審査に観客投票も反映されるようになったんです。それ以来、合格することが増えて出番をもらえるようになりました。つまり、お客さんはおもしろかったら認めてくれるわけですよね。劇場に出るようになって、実際にジェスチャーゲームとか大喜利をする機会もありますけど、「見えてない」ということを絡めてネタにしながらできていますし、お客さんも笑ってくれている。そうなると、やっぱりあのときのあの審査員の言葉は差別だったんだなとあらためて思います。
そのときは、審査員という役回りの人がそういう意識を持っていましたが、ほかにも同じような考え方の人がスタッフの中にいるかもしれません。かつ、キャスティングする立場でそういう人がいたら「僕は使われへんやろうな」という考えはずっと消えないですね。これまでに僕が出られた番組は、たまたまそういう差別意識を持った人がいなかったか、いてもキャスティングする立場になかったか、どちらかなのかなと。