盲目の芸人として活躍している濱田祐太郎さん。自身の障害を「ネタ」にした漫談で人気を博していますが、芸人として知名度が上がっても、過去に差別を受けた経験によって不安とつねに隣り合わせだといいます。(全2回中の2回)

自虐ネタをやろうと思ったことは一度もない

── 2018年にR-1王者に輝いた濱田さんですが、芸人になろうと決めたときの周囲の反応はいかがでしたか?

 

濱田さん:僕、小中学生ぐらいのころから将来は芸人になりたいと思っていて、子どもの軽口みたいな感じで、親にもずっと言ってたんですよ。小さいころは、親も別に本気にしてたわけじゃないと思うんですけどね。それを繰り返してたからか、「吉本の養成所行きたい」と本気で言ったときにも、反対されることもなく「やりたいことがあるんならやってみたら」ぐらいの感じでOKされました。

 

濱田祐太郎
劇場に立つ濱田さん(『よしもと漫才劇場チャンネル』濱田祐太郎 【よしもと漫才劇場 10周年記念SPネタ】より)

── 温かいご両親ですね。

 

濱田さん:温かい…そうですね(笑)。「温かい」って書いてくれて構わないですけど、実際のところはどちらかというと「放任主義」だと思います(笑)。

 

── そうなんですね(笑)。ネタやトークでは目が見えないことをネタにしており、自虐ネタと言われたりもしますが…。

 

濱田さん:お笑いにそんな詳しくない人は僕のネタを自虐だと思うかもしれないですけど、そもそも僕がやっているのって別に自虐ネタじゃないんですよね。周りの芸人たちも、デビューしたてのころは「目が見えてない」ということをネタにしてるだけで「自虐」だと思ったんでしょうけど、最近は「濱田のネタ、自虐やな」って言われることもないですね。それに、自虐ネタをやろうと思ったことは1度もないです。

 

── 少し前に、とろサーモン久保田かずのぶさんの代打で出演した『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日系)での「吉本で唯一オンラインカジノができない」という発言も話題になりましたが、それも自虐ではない?

 

濱田さん:「目が見えないからオンラインカジノができない」ということなのですが、できたほうがいいこととか、できて楽しいことが「見えてないからできない」のなら、自虐になるかなと思うんですけど、オンラインカジノって見えてても見えてなくてもやっちゃダメじゃないですか。なので、そこに自分を虐げるような要素なんてないから自虐ではないんです。そもそもが「こっちがイジってるぞ」というネタなんですよね。

 

濱田祐太郎
趣味でギターも弾く濱田さん。愛用のギターとの自撮りにチャレンジ

── ちなみに、濱田さんのネタをデリケートな話題としてとらえてしまう方もなかにはいらっしゃると思いますが、お客さんからの反応はいかがですか?

 

濱田さん:そういう人はいるでしょうね。でも、少し聞いたらそんなことも言ってられないような、しょうもないトークしか僕はしてないんです(笑)。だから「デリケートな話題だと思ってたけど、濱田さんのネタを見ておもしろいって思えるようになりました」というようなことをよく言われます。

 

逆に、僕は障害があってもなくても、なんでもネタにするので「不謹慎だ!」って言われてしまうこともあります。たとえば、盲導犬のことを茶化したネタをYouTubeに投稿したら、目が見えない人からアンチコメントが来て。「盲導犬の気持ちがわからないんですか!」みたいなことが書いてあったんですが、そのときは「ごめん、犬の気持ちはわからへんわ」と思いましたね…(笑)。