自分のパートナーが何の苦もなく、いつも料理を作ってくれていると思ったら、相当まずい。勝俣州和さんは、妻が作る料理に心から感謝し、家族と食卓を囲むことに幸せを感じる日々。作るほう「じゃない人」のあるべき姿とは。(全5回中の5回)

いつも手料理が食べられる幸せと妻への感謝

── 2002年にCAだった奥さんと結婚され、今年で結婚23年目になります。著書の中で「奥さんの料理はラブレターだと思っている」と、つづられていたのが、とても印象的でした。

 

勝俣さん:僕自身、ひとり暮らしをしていたころは料理が好きで、よく自炊していたんです。だから、料理の大変さはよくわかるんですよ。まず買い物に行って、帰宅したら食材を冷蔵庫にしまって、野菜を洗って切って。火加減に気を配りながら、鍋やフライパンの横でずっと見ていないといけない。しかも、やっと完成したと思ったら、味がイマイチでガッカリすることも…。ひとつの料理ができ上がるまで、いろんな工程があって、手間も時間もかかるんですよね。それを毎日のように、家族のためにやってくれていると思うと感謝の気持ちでいっぱいになるし、文句なんて出てこないです。

 

── できあがった料理だけなく、作るまでの大変さに目を向けることができる男性は、意外と少ない気がします。ご実家は11人家族だったそうですが、そうした環境も影響しているのでしょうか?

 

勝俣さん:それは大きいと思いますね。11人家族だったので、母親は本当に大変だったはずです。毎日、大皿料理が5品くらい並んでいて、しかもどれもおいしかった。親父は「子どもの発想力は食卓からも育まれる」という考えだったから、母親も僕たちのために一所懸命作ってくれていたんだと思います。

 

勝俣州和
大学生活を満喫していたころ。元気な笑顔はいまも健在

母親の料理がおいしいから、食事の時間が自然と楽しくなって、みんなで笑いながらご飯を食べる。そんな「幸せのサイクル」がいつの間にかできていた気がします。いま、それをうちの奥さんが実践してくれているんです。本当にありがたいし、幸せだなと思います。うちの子どもたちに「外食行く?」と聞くと、「家がいい」って言うんです。外で食べるより、家でワイワイしゃべりながらご飯を食べるのが楽しいって。それが、なによりうれしいです。

 

── 楽しそうな食卓の様子が目に浮かびますね。

 

勝俣さん:コロナの時期、家族全員が毎日揃って食事ができたことが本当に楽しかったと、奥さんがよく言っていたんです。世の中では「コロナ離婚」なんて言葉も聞きましたが、その理由のひとつに「朝食を食べているときに夫から『夕食なに?』と聞かれてうんざりした」という声があったとか。料理の苦労を知らないと、当たり前のように食事が出てくると勘違いしてしまう。一度自分で全部やってみるとその大変さが身に染みると思います。相手の苦労を想像して、理解することって大事だなと思うんです。