テクニックばかり求めていた20代との違い
── 還暦を迎えても、仕事に対して新鮮な気持ちを持ち続けていられるのは、素晴らしいことだと思います。
勝俣さん:最近よく思うんです。「もう一度、デビュー当時の気持ちに戻ってやってみようかな」って。欽ちゃんからたくさんのことを教わり、吸収していたあのころの気持ちを取り戻したくて。コロナ禍の3年間で、家にある欽ちゃんの本をあらためて全部読み返しました。すると、当時、大事だと思って線を引いていた箇所と、いまの自分が心動かされる部分がまったく違っていて、ハッとしたんです。
20代のころは、とにかく笑いのテクニックばかりに目が向いていて、表面的な部分ばかり追いかけていました。でも、欽ちゃんは当時からずっと、「技術よりも人間性や優しさが大事」と説いてくれていたんですよね。それなのに、当時はその重要な部分をスルーして、線すら引いていなかった。自分では、人間性には自信があると思い込んでいたけれど、いま思えば、それはただの過信だったんだと気づきました。
── 原点に立ち返ったということなのですね。
勝俣さん:そうですね。もう一度、あのころの純粋な気持ちに戻って、いまの自分でやり直してみようと決めました。じつはいま、欽ちゃんと一緒にYouTubeのライブ配信や舞台などをやらせていただいているんです。還暦を迎えて、再びこうして欽ちゃんとお仕事をご一緒できていることが、不思議な縁と言うか、どこか呼び戻されたような気さえしています。
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芸歴37年を迎える勝俣さんが、いまの奥さんと結婚したのは23年前。いまも大切な存在ですが、ふだんから作ってもらう料理にも感謝をしているそう。妻の手料理に文句なんかひとつもない。そう考える理由のひとつは、勝俣さん自身が11人の大家族のために日々料理を作る母親の姿が影響しているそうです。
PROFILE 勝俣州和さん
かつまた・くにかず。1965年生まれ、静岡県出身。劇男一世風靡を経て、1988年アイドルグループCHA−CHAを結成。 現在、バラエティ番組に多数出演。YouTubeチャンネル『勝俣かっちゃんねる』好評配信中。著書に『全力疾走するバカになれ』ほか。
取材・文/西尾英子 写真提供/勝俣州和