「障がいに偏見のない子」に成長してくれた我が子
──「こころみ学園」との関わりが、ご家族にとっても特別なものになっているんですね。
勝俣さん:うちの子どもは、幼稚園に入る前から園のみんなと関わってきたので、成長をずっと見守ってもらっているような感じです。だからもう親戚みたいな存在ですね。その影響か、子どもたちは障がいをもつ人に対する偏見がまったくありません。ふだんから、街で困っている人を見かけたら、そっと近づいて様子を見たり、できることがあるかを見つけています。親の僕が関心するほど、そういう行動が自然とできていますね。
── それって、なかなかできることではないと思います。
勝俣さん:園での皆さんとのふれあいのなかで、人としての優しさとか、助け合いの精神を自然と学んだんじゃないかと思います。家族から、「パパは、園のみんなとよく似ているよね」と言われたことがあります。何でも楽しそうに取り組むところとか、誰とでもわけ隔てなく接するところがそっくりなのかもしれません。
上の娘はいま、美術系の大学に通っているのですが、「自分の作るもので誰かを喜ばせたい」と楽しそうに話しています。自分のためだけじゃなくて、誰かのために力を使いたいと思える子に育ってくれたことが、なによりうれしいですね。いまでも、「こころみに行く?」って聞くと、家族みんな「行こう!」と喜んでくれます。ただ、ひとつだけ、ちょっと納得いかないことがあって…。
── 何でしょう?
勝俣さん:前までは園生がまず僕のところに来てくれたのですが、最近、園に行くとみんな僕の前を素通りして、奥さんや娘にばっかり話しかけるんですよ(笑)。人気をすっかり持っていかれた感じで。みんなが楽しそうに盛り上がっているのを見ると、うれしいような、でも、ちょっと寂しいような…そんな気持ちになります(笑)。
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社会福祉施設での交流を深める勝俣州和さん。芸歴37年を迎えたいまも仕事の主戦場は芸能界にあります。仕事の浮き沈みが激しい世界ですが、焦ることなく日々を過ごせたのは、欽ちゃんを始め、尊敬する先輩が口にした「タレントというのは、ひとりでいるときに何をしているかで未来が決まる」という言葉のおかげだと言います。
PROFILE 勝俣州和さん
かつまた・くにかず。1965年生まれ、静岡県出身。劇男一世風靡を経て、1988年アイドルグループ・CHA−CHAを結成。 現在、バラエティ番組に多数出演。YouTubeチャンネル『勝俣かっちゃんねる』好評配信中。著書に『全力疾走するバカになれ』ほか。
取材・文/西尾英子 写真提供/勝俣州和