「かっちゃんもメールの勉強したほうがいいよ」

──「支援という意識はない」とおっしゃったのは、そういう意味だったのですね。どれくらいの頻度で通われるのですか?

 

勝俣さん:年間で5~6回くらいでしょうか。最初に訪れたとき、スタッフの方に園生の施設内を案内していただいたのですが「園生は外部のみなさんとは目を合わせません」と言われました。ところがみんなは、しっかり僕の目を見て自分から挨拶してくれるんです。初対面なのに、自分の宝物を見せてくれたり、楽しい話を聞かせてくれました。スタッフの方も、「ふだん人に見せる反応とずいぶん違いますね」と驚いていました。そこから園生との交流が始まって、毎回、いろんなお話をさせてもらっています。

 

── 園に行かれるときは、おひとりで?

 

勝俣さん:家族と一緒に行ったり、仲間と行ったりします。妻は園生とメールでもやりとりしているんです。僕ですか?いまでもガラケーを使っているので、メールができないんですよ(笑)。園生に、「かっちゃんもメールの勉強をしたほうがいいよ」と言われます。カメラが趣味の子からは「メールで写真を送りたいのに」と。なので、そういうときは奥さんにやりとりをお願いしていますね。「しいたけを収穫しました」「今日は誰々の誕生日でした」といった、日常のちょっとしたことをふだんから報告してくれるみたいで、心がほっこりします。

 

勝俣州和
大学生活を満喫していたころ。元気な笑顔はいまも健在

園で開催されるイベントは、家族みんなで毎回楽しみにしていて、あらかじめスケジュールに入れています。毎年11月に2日間行われるココ・ファーム・ワイナリーの収穫祭は、1万人のお客さんが訪れる大イベントです。ブドウ畑の斜面を客席にしてアーティストの生演奏を聴きながら、できたてのワインを楽しめるんですよ。園生が天使の格好に仮装してお客さんを出迎えています。僕は、乾杯の挨拶をさせてもらっています。12月のクリスマス会では、サンタクロース役を仰せつかっています。以前は園長先生がその役をされていたのですが、亡くなられてからは、僕が引き継がせてもらっているんです。

 

──  園との交流をご家族で楽しんでいらっしゃることが伝わってきます。

 

勝俣さん:家でココ・ファームのワインを飲む時間も、僕にとって園とのつながりを感じられる温かいひとときですね。こころみ学園のみんなが手がけるワインは、すごくおいしくて世界的に評価されているんです。つまり、園生たちは素晴らしい生産者でもあるということなんです。こころみ学園には優しく温かい空気が流れているんですね。スタッフの皆さんの笑顔や言葉がとてもやさしくて、真心に溢れている。だから、園生のみんなも、誰に対しても優しいんですよ。そうした表現の中から、結果としていい酵母が生まれて、おいしいワインができ上がるんじゃないかと思います。 

 

 

障がい者との接点は、じつは幼少期からあったと話す勝俣州和さん。「だから、かわいそうという意識はありませんでした」と言います。義足の祖父は乗馬用ズボンを仕立てる名職人。子ども心にカッコいいといった憧れが原点にありました。

 

PROFILE 勝俣州和さん 

かつまた・くにかず。1965年生まれ、静岡県出身。劇男一世風靡を経て、1988年アイドルグループ・CHA−CHAを結成。 現在、バラエティ番組に多数出演。YouTubeチャンネル『勝俣かっちゃんねる』好評配信中。著書に『全力疾走するバカになれ』ほか。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/勝俣州和