効果をより得るには心拍数に着目
── 30分以上こぎ続けること以外に、脂肪をより効率的に燃やす方法はありますか。
山口さん:脂肪を燃焼させるために効率的な運動の強さは、心拍数でほぼ把握ができます。あまりに強すぎる運動でも、弱すぎる運動でもなく、目安としては「ハアハア」と少し息が上がる程度です。しっかり数値として把握されたい方は、計算式がありますので、手首につけるだけで心拍を測ることができるスマートウォッチで確認していただけたらと思います。

その人の最大心拍数は、220-年齢です。たとえば、40歳の方は220-40ですので、どんなに頑張っても心拍数は1分間で180回です。次に、脂肪が効率的に燃焼する心拍数を出します。一番簡単なのは最大心拍数の60〜70%の領域で運動することが目安です。もう少し厳密に算出したいという方は、個人差がある心拍数を考慮した次の計算式を用いてください。
40歳で、安静時の心拍数が1分間で60回という方の場合、最大心拍数の180から60を引いていただくと120という数字が出ます。こちらに0.7をかけて、安静時の心拍60をたすと、144となり、こちらが運動時の目標心拍数です。144を超えると運動が強すぎるので、144を超えない程度に自転車をこぎ続けると効率的に脂肪を燃やせることになります。
(例)40歳、安静時の心拍数が1分間に60回の場合
最大心拍数は220-40=180
180-60=120、120×0.7=84
目標心拍数は84+60=144
目標心拍数は、ウォーキングだとかなり早く歩き続けなくてはなりませんし、ランニングですとすぐに超えてしまいます。ギアの重さやペダルの漕ぎ方で調整ができる自転車は、運動の強度を調整するのに適していると思います。心拍をスマートウォッチなどで確認する際は、走行しながらは危険ですので、必ず自転車を止めて確認するようにしてください。
── お話を伺って、早速実践してみようという気持ちになっているのですが、どのくらい続けることで効果がありますか。
山口さん:自転車でのエクササイズは、短期的にすぐ効果が現れて見た目でもわかるというようなものではありませんので、1年程度継続していただくと、脂肪が燃焼しやすい体のベースが出来上がります。焦らずに、地道に気長に続けることが大切です。
── 1年と言っても、毎日の子どもの送迎や通勤を兼ねていれば、無理なく続けられそうです。
山口さん:毎日自転車を利用する方は乗り方や時間を意識していただき、そうではない方も無理のない範囲で、1週間に1〜2回、週末に自転車をこぐだけでも変わってきます。少ない回数でもいいので、1年など長い期間、継続することが大事です。継続していると体幹にある大きな筋肉が発達して基礎代謝が上がります。そうすると、たとえば家事をしているだけでも体の大きな筋肉が動いて運動しているような状態になります。呼吸をして、日常生活を送るだけでフィットネスしているのと同じ効果になりますので、そこまで継続させるのが理想ですね。
スマートウォッチをアプリと連動させて、どのくらい運動したか記録として残し、体重計などとも連動してチェックしていくのも継続するためのモチベーションになると思います。今は手軽に借りられるレンタサイクルやシェアサイクルなどもありますので、手持ちの自転車がない方も、全国のサイクリングコースを調べて、旅行や夏休みの計画を立てるのもいいと思います。ぜひ、楽しみながら自転車でエクササイズをしてほしいと思います。
PROFILE 山口和幸さん
やまぐち・かずゆき。スポーツジャーナリスト、(株)プレスポーツ代表取締役。ツール・ド・フランス取材歴は30年以上。今年7月には30回目のツール・ド・フランス現地取材へ。およそ1か月間、フランスを旅しながらレースを追う。身長172.5cm、体重55kg、体脂肪率は8%。国内の自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、『ツール・ド・フランス』(講談社現代新書)
取材・文/内橋明日香 写真提供/山口和幸