「自転車では痩せない」「足が太くなる」。そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。実は、脂肪燃焼効果が期待できる自転車の乗り方があるそうです。普段お子さんの送迎や通勤で自転車に乗っている方も、これから運動を始めたい方も手軽にできる、自転車を使ったエクササイズ法をスポーツジャーナリストの山口和幸さんに伺いました。
脂肪が燃焼し始めるタイミングは
── 子どもの送迎で自転車をこいでいると、つけているスマートウォッチが「ワークアウト中のようですね」と反応するのですが、「自転車ではやせない」という話もよく耳にします。本当に自転車でエクササイズをしていることになっているのでしょうか。
山口さん:やせるためにはそれなりの時間やお金をかける必要があるイメージがある方もいらっしゃると思いますが、実は、ジムで運動したような効果がお手持ちの自転車で得られる方法があります。自転車でやせるためには、大前提として30分以上こぎ続けることでエクササイズ効果が得られるようになります。

── なぜ30分以上なのでしょうか。
山口さん:30分以上の有酸素運動をすると、脂肪が燃え始めるという医学的データがあります。運動をすると、まず血液にあるグルコースがエネルギー源として使われるのですが、これが30分経つと枯渇してきますので、そのあとから体内の脂肪がエネルギー源として使われていきます。逆をいいますと、30分に満たない有酸素運動には、ダイエット効果はそれほどありません。30分以上運動をするとなると結構ハードルが高いように感じると思いますが、自転車であればお子さんの送り迎えや出勤を兼ねてできますので、数ある運動のなかでもとっつきやすいです。また、新たに運動を始めようと思わず、手軽に始められるのもいいと思います。
── 自転車をこぎ続けるといっても、信号待ちや一時停止などで止まる必要があると思います。これでも効果はありますか。
山口さん:それでも大丈夫です。1回のアクティビティの時間が30分以上であればいいので、信号などで止まってもフィットネスとしては問題ありません。おやつを食べるわけでもない限り、血液中のグルコースは補充されませんので、信号が青に変わって自転車をこぎ始めれば脂肪燃焼が再開します。何より安全を最優先に、交通ルールを守って自転車をこいでいただけたらと思います。
家からお子さんの保育園への送迎が20分だという方は、少し遠回りして30分以上になるようにしてください。厳密にストップウォッチを使ってまで測らなくていいのですが、少し時間を意識していただくだけで変わってくると思います。
── 自転車は、足が太くなると思っている方も多いです。
山口さん:女性の方に多く見受けられるのですが、サドルが低い方が多いです。そうすると太ももの前側の筋肉、大腿四頭筋を酷使しすぎることになってしまって、効率的にペダルを踏めず、足が太くなってしまうという傾向があります。重たいギアを30分以上踏み続けるのはなかなか大変ですし、負荷がかかりすぎて無酸素運動の領域になっていくので、筋肉が肥大してしまいます。自転車に乗りながら筋トレをしている状態ですね。
ペダルの位置を一番下にした状態で、足を乗せて膝が少し曲がる程度にサドルを調整していただきたいのですが、地面に両足が着かないので高いと感じる方が多くいらっしゃいます。ですが、このくらいのサドルの高さにした方が、体の後ろ側の大きな筋肉であるハムストリングスや、お尻の大殿筋などを使えて、楽にペダルが踏めます。サドルの高さを正しく調整し、軽いギアでこげば足が太くなるということはまずありません。ギア付きの自転車でしたら坂道ではギアを軽くして、電動アシストつき自転車の方は電動アシスト機能を使って、軽めのギアでこぎ続けてください。