── 現在は、若者たちを支援する一般社団法人コンパスナビの代表理事として活動されています。
ブローハン聡さん:はい。僕は、タレント活動を続けていた20代半ばのころ、血縁関係も含めて、これまでの環境をいったんリセットして、大きく生活を変えたいと強く思った時期がありました。そのときに初めて出会ったのが、児童養護施設を退所した若者たちを支援している方々でした。彼らは血縁関係のこと、将来のこと、漠然とした不安を抱えていた僕の話を、本当に親身になって聴いてくださったんです。

それだけでなく、新しい生活へ踏み出すための環境づくりや経済的なことまで一緒に考えてくれて、「こういうふうに関わってくれる大人がいるんだ」と驚いたのを覚えています。その経験がきっかけで、「自分と同じような思いを、これからの子たちにはしてほしくない」という気持ちが芽生えました。
ちょうどそのころ、虐待や困難な体験をしてきた10代、20代の若者たちが、自分たちの言葉で発信を始めていることを知って、「手伝うよ」と軽い気持ちで活動に参加するようになって。気がついたら、自分が話し手として取材を受けるようになっていました(笑)。
── ご自分でも驚くほど、自然な流れでいろいろなことが始まったのですね。
ブローハン聡さん:そうなんです(笑)。最初は驚いたけれど、少しずつ、「伝える」ことの大切さを理解するようになりました。その後は、児童養護施設の仲間たちと一緒に、YouTubeチャンネル『THREE FLAGS―希望の狼煙』を立ち上げ、虐待や社会的養護に関する情報発信を始めました。当事者が自分の言葉で話すこのチャンネルは、多くの人に届くことを目指した小さな一歩でしたが、今も大切に続けています。

2024年10月からは一般社団法人コンパスナビの代表理事を務めることになって、こども家庭庁の「社会的養育・家庭支援部会」などの委員としても声を届ける立場になっています。自分でも「えっ、何がどうなってるの!?」という感じですが(笑)、気づいたら、自分が歩んできた道が誰かの背中を押すものになっていた。それが、とても嬉しいです。