髪の毛の色や化粧に批判的な声があったけど
── 植草さんは髪型やメイクもばっちりされていて競技力と女子力を両立しているイメージがありました。そのあたりは意識されていましたか。
植草さん:社会人になって髪の毛を染めたり、化粧をしたりしたときやメディアにたくさん出たときは「チャラチャラしてる」といった批判的な声がありました。大学を卒業して社会人になりたてのころはとくに。学生時代はお金がなかったけれど、そういう生活から解き放たれてメイクや髪型はもちろん、いろんなものへの興味がどんどん湧いてきて、おしゃれをしたくて仕方ない時期だったんです。だから髪を染めようが、ネイルをしようが化粧をしようが、誰も文句を言えない状況を作りだしたいと考えていました。実は当時、髪を染めるのはタブーだったんですが、毛先に少し金髪を入れて、試合のときは髪をお団子にして隠していたことがありました(笑)。

── 武道はとくに規律などの面が厳しいイメージがあります。大学時代の部活では髪型など身だしなみに関してのルールは厳格なものでしたか。
植草さん:ネイルはダメ、ピアスや化粧は禁止でした。一度、化粧をして怒られたことがありました。夏休みにメイクをして高校生の試合を見に行ったんです。私自身が試合や練習をしに行ったわけではなくオフだったので大丈夫だと思っていたんですが、会場には大学関係者の方も視察に来ていて、「植草、なんだその顔は!」と指摘されて。休み明けには連帯責任で男子も含め同期全員で草むしりをさせられました。
── 同期からのクレームはありませんでしたか?
植草さん:男子からは「化粧するのをやめてくれ」とお願いされましたね。「自分の彼女が化粧しないでデートに来たらどうするの?」と言い返したら、「植草は立場が違うじゃん」って。私としては競技の時とオフを完全に分けたかったからそうしていたのに、化粧することの何がいけないんだよという感じでしたけど…。でも、彼らからしてみるとオフでも空手の試合に来てるんだから公的な場所だろうと。だからそこは自分が一歩引いて「わかった」と納得しました。
── 身だしなみの面ではほかにもルールを決められていたんですか。
植草さん:大学時代、女子はショートという決まりがありました。耳にかかるのも前髪がかぶるのもダメ。当時ボブにしていたんですけど「長い」と先輩に怒られました。それでギリギリのところまで短くカットされたんです。ただそれがあまりにもショックすぎて…「辞めます」と言いに行ったくらいです。今はどのスポーツも男子の坊主頭や女子のショートカットの強制はなくなりつつありますけど、当時はそれが好印象に見えるという固定観念があったんだと思います。