指導者になって提案した「坊主頭の廃止」
── 昨年、ご自身の母校でもある日本体育大学柏高校空手部の監督に就任されました。教え子たちにはどんなルールを設けているのでしょうか。
植草さん:監督に就任する前に男子の坊主頭を廃止しました。以前、慶応高校野球部で坊主頭を強制しないことが話題になっていましたけど、監督さんが「ひとつの選択肢を学ぶ場になる」という話をされていたことがすごく心に残っていて。もちろん、坊主頭が好きならそうすればいいと思いますけど、坊主頭にして気合を入れるとか、ミスをしたから坊主頭にするのは少し違うと思うんです。自分が指導者になったときはそういうことをなくしたかったので、前監督に坊主を廃止にしましょうと提案させていただきました。

── 学生のころはギリギリのところで自由を求めていたように見えますが、指導される立場になった今はどんなことを大切にされていますか。
植草さん:時代の流れとともに変化しているので、学校の方針に従いながら、今の時代にあったやり方で指導することをいつも意識するようにしています。自分のなかで当たり前のことが、必ずしもいまの子たちにとっても同じだとは限らないので。練習ひとつをとっても、みんなが納得できる効率的な方法を模索しながらトライしているところですね。
── 3月末に行われた全国高等学校空手道選抜大会では指揮を執る日体大柏高空手部が女子団体戦で準優勝を収めました。
植草さん:日本一を目指していたので悔しいですが、選手たちは本当に頑張ってくれたと思います。この経験を糧に夏のインターハイでも優勝を目指して頑張りたいですね。選手たちの頑張りを通して、また空手の楽しさを感じさせてもらっています。
── 指導としての今後の夢を教えてください。
植草さん:昨年のパリで空手はオリンピック種目から外れましたが、またぜひ復活させたいですね。それにより多くの人に知っていただきたいし、メディアにも注目される競技にしたいです。指導者としては駆けだしたばかりでまだ微力ですが、私と関わった人たちがより豊かな人生に進めるようなきっかけ作りが出来ればと思っています。
ポジティブなエネルギーは周りの人を幸せにする力があると思っています。自分のスタイルを貫いて、周りにいい影響を与えたいし、人間・植草歩の魅力を感じてもらえるような女性になっていきたいですね。
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母校空手部の指導者となった今はオンとオフの切り替えを意識し、練習とそれ以外の時間とのメリハリをつけているという植草さん。部員たちとの距離感は遠すぎず、近すぎず。絶妙な距離感を保っていますが、年齢の近い教え子たちにとっては「お姉さん」的な存在でもあり、ときには自身の恋愛の話をすることもあるそうです。
取材・文/石井宏子 写真提供/植草歩