通算4度の世界王者に輝き、現役時代はその愛くるしい容姿から「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」と親しまれた植草歩さん。ネイルはダメ、化粧もピアスも禁止という厳しい世界に学生時代から抗ってきた植草さんだからこそ、母校の監督就任時に提案したことがありました。(全3回中の1回)
容姿先行で報道された当時の心境は
── 現役時代は「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」という愛称で呼ばれていました。当時、本心ではどのように感じていましたか。
植草さん:そう呼ばれ始めたのは、大学3、4年生のころでした。自分では似ているとは思っていなかったですね。ただ、そう呼ばれることを嫌がる人はいるかもしれませんが、きゃりーぱみゅぱみゅさんのファンの方が私を見てくれたり、それが空手を知ってもらうきっかけになったらうれしいと思っていました。だからネガティブにはとらえていなかったし、むしろポジティブに受け止めていました。「かわいい」と言われることも素直にうれしかったです。

── SNSなどを通して心ない言葉をかけられることはなかったでしょうか?
植草さん:もちろんマイナスな言葉を言われることはありました。「たいしてかわいくないだろう」とか。でも、それが「見返してやるんだ」という原動力につながったというか。私って図太い人間なんです(笑)。スポーツの世界はすごくシンプルで、勝てば光が当たるし、勝利が積み重なっていけばいくほどそれが大きくなっていきます。私はそれがシンプルに楽しかったんですよね。何を言われても結果で見返してやるから見ててよみたいな。
── 空手でまだ結果を残せていなかったころに容姿が先行して報道されても、それをパワーに変えられていたんですね。
植草さん:ただ当時はまだ全日本選手権でも優勝したことはなかったですし、世界の頂点に立ったこともありませんでした。実績が出せていないなかで必要以上に脚光を浴びるというか、「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」というキャラクターが先行する状況ではあったので、お飾りのマスコットで終わりたくないという気持ちは人一倍強かったです。
── その後、2015年の全日本選手権で初優勝。翌年の世界選手権も制覇して名実ともに空手界を代表する選手となりました。まさに有言実行ですね。
植草さん:競技に注目してもらうにはやっぱり結果を残すしかないですからね。もちろん容姿は存在を知ってもらうきっかけにはなるだろうけれど、かわいい人やキレイな人はモデルさんや女優さんなどたくさんいる。私はスポーツしている割にはかわいいという感じで取りあげていただいていたというだけなので、根本的に強くなければ意味がないと考えていました。