V系の魅力を知ってほしい

── その後も旺盛なファン活動を通じてX JAPAN、LUNA SEA、GLAYのメンバーやファンとも親交を深め、いつしか「ロックの母」と呼ばれるようになった東海林さん。V系の伝道師のような役割を果たしてきた一面も感じられます。
東海林さん:そうかもしれませんね。過去に私が出演していたお昼のワイドショーでも「V系を取り上げましょう!」とディレクターに熱心に提案したのですが、「主婦層がロックなんか聴くわけない」と誰も相手にしてくれなくて。そんななか、採用してくれたディレクターがひとりだけいて、X JAPANを紹介できることになったんですよ。そしたらすごい反響で、放送後は局宛てに連日ファンレターが届いたそうです。その後、HIDEちゃんがソロデビューしてhideちゃんになり、亡くなってしまった後もV系バンドのライブや音楽イベントには通い続けてきました。V系というひとつのジャンルに熱中していたら、あっという間に30年、40年が過ぎ去っていった感じですね。90歳になってYouTubeを開設したのも、V系の魅力を知ってくれる人が少しでも増えるといいな、という気持ちからです。
最近はメディアの在り方も大きく変わったでしょう。大きなレコード会社が牛耳っていた時代が終わって、今はどこのV系バンドに行ってもメンバーの中に社長がいるの。音楽制作だけじゃなくて、自分たちで何もかもやらなきゃいけない時代ですからね。だから、私がインタビューという形で話を聞きに行くことで、彼らが言いたいことをどんどん発信していく場にしてほしいなと思っています。
日本の音楽シーンだと、V系はいまだにその枠組みに入れてもらえないところがあるでしょう。スポンサーがつきづらいという課題もある。でもだからこそ、V系バンドで頑張っている皆さんには、自分たちの音楽にプライドを持ってほしいですね。
── ところで、最近の東海林さんの“推し”は?
東海林さん:「アリス九號.(Alice Nine.)」というバンドのギタリストのHIROTOさんです。HIROTOさんとはLINE友達になれたので、やり取りできるのがうれしいですね。
娘や息子は音楽の趣味が合わないので、ライブに誘っても誰も一緒に来てくれないんですよ。でも同じバンドを応援しているV系ファンの若い子たちとの交流もありますから、90歳になった今も毎日を楽しめています。
PROFILE 東海林のり子さん
しょうじ・のりこ。フリーアナウンサー、リポーター。1934年、埼玉県生まれ。57年、立教大学文学部卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。70年に退社後はフリーランスの芸能リポーターとして「3時のあなた」「おはようナイスデイ」などの事件リポーターとして名を馳せる。95年、リポーター職から引退。2024年、90歳で初のYouTubeチャンネル「東海林のり子現場に直撃チャンネル」を開設。
取材・文/阿部花恵 写真提供/東海林のり子