数々のダイエットに挑戦もリバウンドは「60回」

斉藤こず恵
結婚しアメリカにいた32歳のころ。1年後の33歳で日本で芸能界に復帰した

── 斉藤さんはテレビで数々のダイエット企画に挑戦されてきたそうですが、印象に残っているダイエット法などありますか?

 

斉藤さん:当時は体型のことで傷ついたりコンプレックスもあったので、テレビのダイエット企画のオファーがあれば積極的に受けてきました。それで本当にいろいろなダイエットに挑戦しました。同時に、リバウンドした回数はなんと60回(笑)。印象に残っているダイエットは、出刃包丁を2本使って背中をたたかれるものです。施術の直前に目の前で実際に野菜なんかをスパッと切って見せるんですよ。それでやるわけですから「これは人間が恐怖で一瞬にして白髪になったり、冷や汗かいてげっそりするようなパターンのやせ方だよね?」とスタッフさんたちと笑ったものです。

 

あとは、はちの針を刺すものとか。なかには放送がお蔵入りしたものもありました。当時のコンプライアンスに引っかかるって、よっぽどでしょ?日本では認可されていない成分などが入ってたのかなと思いますが、効果はグレーなものばかりで。あとは、パクチーだけとか、きのこだけとか、1種類の食材だけを食べ続けるような極端なものが多かったです。このタイプのダイエットがいちばんつらかったですね。 

 

── 包丁やハチなど、なかなか突飛なダイエットが多かったんですね。実際に効果を感じられたダイエットはありましたか?

 

斉藤さん:いちばん効果があったのは、やはり筋トレです。食事は普通に食べながらやればいいので。ダイエット企画って食事の内容がメインのものだと、結局「適度な運動も併せてしてください」と言われるんですけど、私はその部分ができてなかったんですよね(笑)。運動メインの企画ならもう体を動かすしかないですから、やはりやせました。今はゆるくですが、お米を玄米に置き換えてタンパク質はお肉を食べて。スクワットを朝晩で100回続けています。

 

筋トレもちゃんと負荷がかからないとやせませんからインストラクターの方に聞くというのは大事だなと学びました。今はお休みしていますが、体調が落ち着いたらジムで筋トレを再開したいですね。健康のために旦那さんと一緒に行こうかな。

 

斉藤こず恵
「数々のダイエットにチャレンジしてきた」と語る斉藤こず恵さん

── たしかに極端なダイエットより、筋トレのほうが健康的な気がしますね。

 

斉藤さん:やはりなんでも極端なものや、やりすぎはよくないです。リバウンドを60回も経験してわかりました。最近思うのは「やせていることがいい」という感覚になってしまっている若者が多いということ。それは問題なんじゃないかなって。実際、周りの若い子でも、とても細いのに「もっとやせたい」と言うんですよ。SNSで見た目のことを叩かれたりすると「やせていないといけない」という強迫観念でメンタルを病む子が多いと聞きます。体型のことで苦しむ子がいるのはつらいですよね。

 

そういうSNSのあり方とかもダイエットにすごく影響しているから、若い子がかわいそうだなって。太りすぎはよくないけどやせすぎもよくない、健康が最優先なんだってことはあまたのダイエット術経験者として伝えたいですね。メディアで見るアイドルや俳優さんはプロがちゃんと管理して体づくりしてますから、情報不足で体力がない子がやせることを追求しすぎてダイエットすると、体を壊しちゃって危険です。まずは健康第一です。いい年で私もやっと気づいたことです。

 

今はもう私がつらい思いをしたころとは変わって、見た目のことを揶揄する時代じゃなくなってきているように思います。本当の美しさは体型では測れないと周りの大人がちゃんと教えてあげるべきじゃないかと感じているところです。

 

 

いじめを機にアメリカ留学を果たし、舞台で活躍の場を広げてきて斉藤さん。そんな矢先に、がんと診断され、余命宣告を受けます。がんの発覚から今では20年ほどが立つそうで、今はがんと共存し、自分の体と相談しながら仕事に励んでいます。

 

PROFILE 斉藤こず恵さん

さいとう・こずえ。1967年生まれ、東京都出身。3歳で劇団若草に入団。74年NHKの朝ドラ・連続テレビ小説『鳩子の海』でヒロインの少女時代を好演し一躍人気子役に。76年には『山口さんちのツトム君』で歌手デビュー。その後、芸能活動を休止し、アメリカの大学に進学。帰国後は舞台俳優として活動のかたわら、テレビなどで数々のダイエット企画に挑戦する姿が話題に。現在は声優としても活動の場を広げている。

取材・文/加藤文惠 写真提供/斉藤こず恵