「彼女は社会を変える存在」寝たきりにはさせない

── 洋一さんにもお聞きします。洋一さんはどういった思いから、友理子さんと一緒にご活動をされていますか?

 

洋一さん:病気や障害だけを見たら大変な状況に見えるかもしれません。でも、彼女には、病気や障害に屈しない精神力があります。彼女が動けば社会がよくなると僕は確信しているんです。そんな彼女をただベッドに寝かせているだけではもったいない。彼女が自身の能力を最大限に発揮させることが、僕自身の使命とさえ感じるし、喜びでもあります。そのために生活面でのサポートをするのは当たり前のこと。どんなに身体が不自由になっても、彼女らしさを失わないよう、僕にできることを取り組みたいと思っています。

 

織田友理子と家族
切迫流産を乗り越え、2006年長男を出産

彼女と一緒に活動をしてうれしいのは、誰かに喜んでもらえたり、社会がよくなっていくことを実感できたりすることです。たとえば、もう何年も前に公開したYouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」には、いまだに「参考になりました」「とても助かりました」などの感想が寄せられます。患者会の活動も「WheeLog!」アプリも、自分たちの活動が誰かの役に立っていることが最大の魅力だと思います。

 

── 織田さんご夫妻は、ふたりでひとりのような深い絆を感じました。織田さんは、洋一さんの言葉を聞いて、どう思われますか?

 

織田さん:ここまで想ってくれているから、私は私らしく生きていくことができているんだなと再確認しています。じつは最近、私の気持ちもほんの少しずつですが、変わってきています。もしかしたら彼にとっても私と活動することは、「楽しいんじゃないかな」と思うようになりました。ゼロから活動を始め、私たちの声に耳を傾けてくれる人が少しずつ増えています。講演会でお話をしたり、省庁の方と会えたり、さまざまな場所で発言する機会も年を追うごとに多くなっていて。アプリの開発をスタートした当初から、「SDGsにみんなで貢献できる活動」を大きな目標として掲げてきました。その取り組みは実を結び、第7回ジャパンSDGsアワードでは、SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞することができました。

 

もちろん私は自分で体を動かすことはできません。だから、講演や調査などのお仕事があるとき、国内でも海外でも彼はいつも一緒です。これはなかなかできない経験だし、目標に向かって一緒に没頭できるのは、すばらしいことだと感じます。私と人生をともにすることで、彼も充実したエキサイティングな人生を送れているのかもしれない、と考えるようになって。そうしたら、だんだん引け目を感じなくなってきました。私の活動は彼の支えがあってこそ。だからこそ、やっぱり彼自身にも幸せになってほしいし、私と一緒に生きていてよかったなと思ってもらえるよう、感謝を伝え続けていきたいです。