私の経験や取り組みが誰かの希望の光になれば

── 織田さんが洋一さんとともに、すべてのことに全力で取り組んでいるのが伝わります。

 

織田さん:私は何事も全力をつくしてしまうんです。周囲から「ちょっと頑張りすぎだよ」と言われることもあります。どうしてこんなに頑張ってしまうんだろう?と考えると、やっぱり生きている限り、生かされているからには、人のためになりたいから。恩返し、恩送りをしていきたい。

 

忘れられないできごとがあります。あるイベントで車いすユーザーの女性が話しかけてくれました。その方は「中学生のときに織田さんが出演されている番組を観て、勇気づけられました」と言ってくれたんです。その番組では、車いすに乗った私の育児の様子が取り上げられていたようです。その方は「自分は車いすを使っているから、子どもはあきらめていた」とのことで。でも、育児をする私の姿を見て、あきらめなくていいんだと前向きになったと話していました。すごくうれしかったです。

 

彼女は現在、小さなお子さんのママ。私の経験が誰かの希望の光になったと実感できるなんて、これ以上、幸せなことはありません。私の活動のエネルギーの源でもあります。障害があると、つらく悲しい課題と向き合わなくてはいけないことも少なくありません。ときには「自分さえ我慢すればすべて丸く収まる」と、思えてしまうようなこともたくさんあります。

 

でも、いま、課題に丁寧に取り組んでいけば、次の世代がより良い社会で暮らせて、少しでも何かが変わるきっかけになるかもしれません。未来に引き継ぎたくない課題は、いま生きている私たちみんなの力で変えていきたいです。だから、これからも何事も全力で取り組んでいきます。障害や課題があっても、あきらめなければ社会や状況は絶対に変わると信じているから。いま力を注いでいるのは、WheeLog!アプリでバリアフリー情報を集めるだけでなく、実際の社会をバリアフリーにしていくこと。とくに建物については、制度面からのアプローチで、日本の社会をもっとバリアフリーにしていきたいです。

 

 

25年間、パートナーとして過ごす織田さん夫婦。じつは難病が発覚して、友理子さんは何度も「別れよう」と伝えますが、夫の洋一さんは「じゃあ、いましよう」と結婚を即断したそう。はたから見たら大変なご苦労もあったと思いますが、思いは、絆は深いようです。

 

PROFILE 織田友理子さん

おだ・ゆりこ。遠位型ミオパチーにより電動車椅子を利用する中途障害者。一児の母。国内外を車椅子で多数実地調査。2008年に遠位型ミオパチーの患者会「PADM」を設立し、2015年代表に就任。「車椅子ウォーカー」代表。「NPO法人ウィーログ」代表。株式会社インターアクション(プライム上場)社外取締役。国土交通省 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議委員。東京都福祉のまちづくり推進協議会委員。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/織田友理子