障害者も「おもしろいことをする」と思わせたい
── 具体的にどのように意識が変わったのでしょうか?
織田さん:以前は障害者の枠組みのなかで行動するしかないと思っていました。日本では健常者が社会の基準で、障害者はその枠組みのなかで折り合いをつけながら生きていくのが当たり前だと考えていたんです。でも、障害があっても自分の意思をしっかり持ち、伝えていくことで人生を切り拓いていけるんだと学びました。また、障害者などが困っていることに対して声を上げる「当事者運動」、そして「人権」についても学ぶことが多かったです。
最近はだいぶ変わってきましたが、日本では障害の不自由と見られる部分に目を向けられ、「障害者=かわいそう」と、思われる傾向があるように感じます。一方で、デンマークは障害の有無でなく、「その人自身」を見るんです。当事者がイベントを開催するなど面白い活動をしていたり、楽しそうなことをしていたりすると、自然と人が集まり、活動が広がっていく。それが興味深かったです。
私も今後、何か活動するのであれば、苦労話や悲しい話をクローズアップするのではなく、「この人、おもしろいことをしているな」と、思ってもらえるようにしたいなって。それで帰国後しばらくしてからですが、「車椅子ウォーカー」というYouTubeチャンネルを作りました。どうやって車いすで飛行機や新幹線に乗るかとか、バリアフリーが整っていて、車いすでも海水浴やミカン狩りが楽しめる場所などを調べ、情報発信したんです。

── なぜ情報発信をしようと思ったのでしょうか?
織田さん: 26歳で出産後、私は車いすユーザーとなりました。当時は、いまほどバリアフリー化が進んでいなくて、外出するのが難しかったです。息子にいろんな経験をさせてあげられない申し訳なさがあって…。「夏は海に連れていってあげたかった。でも、私が車いすだから、海水浴もできない」と悩んでいました。ところが、調べてみたら、茨城県大洗町にバリアフリービーチがあったんです。おかげで、息子が3歳になったときに家族で海水浴を楽しめました。そのときに「もっとバリアフリービーチの存在を知っていたら、悩むことはなかったし、もっと早いタイミングで海に行けたな」と感じたんです。
こうした経験から、情報って人を幸せにする力がある、とても大切なものだと実感しました。施設などのバリアフリー化が進んでいても、そのことを知らなければ活用できないんですよ。情報を的確に広げて伝えていくことは大事だと気づかされました。ただ、配信開始から比較的早い段階で、自分から一方的に発信する形はちょっと違う気がしてきました。