「このときの思い出が、未来で救いになるように」 

2025年、子どもが生まれた

── 奥さんの写真を見ると、家事をしている姿や買い物をしている様子など、とても自然で素敵です。撮影の際に大事にされていることはありますか?

 

ハマダさん:作為的な写真は撮らないようにはしています。僕は「妻はそのままでいい」と思っているから、「こういうことして」と言ったりはしていないですし、自然体じゃないとあとで見たときに自分も「やらせたな」となるので。長い年月が経って、妻はカメラも僕の一部として見てくれているから、カメラを見てもそのままでいてくれるようになっていますね。とはいっても、本人が見て嫌じゃない写真になるようには気をつけています。

 

── 写真はラブレターのような存在だったとおっしゃっていましたが、写真に込めた想いは14年間で変化しましたか?

 

ハマダさん:僕は中学校でちょっといじめられていたことがあって、自分に自信があまりなかったんです。そんな僕を「いい」と思ってくれた妻に対して、同じようにつらいときがあれば救えるようになりたいとずっと思っています。

 

変わったことで言うと、高校生当時に比べると適当に撮らなくなりましたね。たとえば、今、僕が亡くなっても写真があるなと思って。思い出が味方するわけじゃないですけど、何か妻の力になってくれると思うんですね。だから、ちゃんと撮らないとと思っています。撮り始めたときは、普通に妻が好きで、写真も好きでって気持ちだったんですけど、今はそれにひとつ付随して「未来に残していく」という部分が出てきました。

 

── 奥さんを撮ってきた経験を生かして、家族の日常を撮影する「日常写真プロジェクト」という取り組みを始められたそうですね。

 

ハマダさん:もともとラブレター的な要素で妻の写真を撮っていたのが、だんだん「日常」になって、ふたりの記録になりました。たとえば、遠距離のときの写真はあとで遠距離の期間の記録として見られるし、結婚までのプロセスとしても見られる。「今現在」の写真から「未来」に向けた写真になっていったんですよね。

 

昔の写真を見ると「このとき、こうだったよね」って思い出のフックになりますが、撮っていないとフックも何もないというか、思い出すきっかけさえも失うからもったいないと気づいて。かしこまった記念写真じゃなく、公園で遊んでいる自然な笑顔や通学路を歩く様子とかを1枚でも撮っていれば、子どもが思春期になったり家を出ていっても思い出になると思うんですよね。僕自身の経験を生かしてみなさんの日常写真を撮りながら、そのよさを発信していきたいと思っています。

 

── ハマダさんご自身も今年お子さんが誕生されたそうで、日常の写真にも新しい変化が生まれそうですね。

 

ハマダさん:やることはこれまでと一緒だと思うんですけれど、これまで妻だったひとりだった家族がふたりに増えて幸せの量が増えるなと思っています。一つひとつ小さなことをちゃんと残していきたいです。「たとえ今後なにかあったとしても、このときの思い出が救いになるように」と思いながら撮影を続けていきたいと思います。

 

PROFILE ハマダノブヒロさん

はまだ・のぶひろ。1996年、三重県出身。2019年からフリーランスフォトグラファーとして、ファッションや広告、アーティストフォトなどをメインに活動中。妻を高校時代から撮り続けてきた経験を活かし、家族の日常を継続的に記録する取り組み「日常プロジェクト」も行っている。

 

取材・文/阿部祐子 写真提供/ハマダノブヒロ