社内では誰にも相談せず商品作りに没頭した先に

── まさに手作りですね。

 

鈴木さん:ただ私は理系でもないし、やっぱり素人の考えでした。米ぬかって、乾かすと粉になるので、繊維につかず飛び散ってしまって。次に米ぬかを樹脂に付着させてみました。樹脂は靴下の裏側にある滑り止めなどに使われるものです。そうしたら米ぬかが腐って、臭いがもうすごいことになってしまった。「このままではダメだ、きちんと米ぬかを勉強しなければ」と思い直し、米と米ぬか研究を続けてこられた和歌山県工業技術センターの谷口久次先生の元をたずねました。

 

「米ぬかを使った靴下を作りたい」と伝えたら、先生は「おもしろい!」と言って、いろいろアドバイスをくださいました。先生が言うには、靴下に直接米ぬかをつけるのはまずムリとのことでした。腐るし、臭いが出てしまう。そのかわり、米ぬかから成分を抽出する方法を先生に教わります。ただ、その成分も単に靴下につけるだけだと洗ったら落ちてしまうので、繊維製品用の接着剤を加えて靴下につけたんです。それが初めての米ぬかソックスでした。おそらく世界初の米ぬかを使ったソックスだと思います。

 

ソックス以外にも米ぬかを使った製品を次々開発

── 米ぬかへのこだわりがようやく実を結びました。

 

鈴木さん:先生のアドバイスのおかげです。米ぬかの抽出方法に加え、先生にもうひとつ重要なアドバイスをいただきました。それは、この開発は必ずひとりでやりなさいということ。会社へ持ち帰って、会議にかけ、みんなと相談していたら前に進まない。会議というのは無難なところに落ちつくものだから、反対意見のほうが圧倒的に多いだろう、と。その言葉を大切に、すべてひとりで進めていきました。それもよかったと思います。

 

── 米ぬかソックス「歩くぬか袋」の特徴は?

 

鈴木さん:いちばんは保湿性の高さです。肌から水分が蒸発することで、肌は乾燥してしまいます。けれど米ぬかソックスは米ぬかに含まれる成分が肌を包み込むことで、水分の蒸発を抑えてくれる。この特徴をいかし、保湿性をより高めたシリーズ商品として「米ぬかシリコン」ソックスを販売しています。これは米ぬかのオイルをシリコンに含有させ、かかと部分にはりつけたもの。シリコンプリント加工でかかとを覆うことによって、肌から蒸発する水分を抑え、さらにオイルで包み込んでいきます。ガチガチになったかかとは、クリームを塗った程度ではなかなか柔らかくならないけれど、これなら自然と皮膚をやわらかくしてくれます。

 

さらに、消臭や吸湿発熱性なども米ぬかソックスの特徴です。じつはこれらの機能に関しては、当初はまったく想定していませんでした。ところが、お客様から「この靴下を履いてから足が臭わなくなった」と言われて。「そんなはずはないだろう」と思っていたけれど、同様の声をいくつもいただくようになり、試験をしてみることに。いざ試験をすると、たしかに高い消臭の数値が出たんです。吸湿発熱についてもそうで「履いているとなんだか温かい」というお客様の声をきっかけに調べてみたら、温度が上がっていたんです。

 

メカニズムがどうこうというより、お客様の実感がたしかな数値となってあらわれた感じです。研究機関に依頼し、一般的なヒートインナーをはじめ、吸湿発熱をうたう他社製品とも比較検証を行ったのですが、温かさが上回っていました。