商談がうまくいかず「サンプルを投げ返されたことも」

── 優れた商品力があっても、認知までには時間がかかったのでは?

 

鈴木さん:最初は東京へ販売に行きました。大手量販店から雑貨店まで回ったけれど、相手にしてもらえませんでしたね。手渡したサンプルを投げ返されたこともあります。これはもう自社で販路を開拓するしかないと考えて、ウェブサイトを立ち上げ、店舗も構えました。従業員には「商品力が伝わればいつか必ずお客様は来てくれるから、まずは環境を大切にしよう」と伝えました。お客様が来なくても、直営店内は冷暖房を入れて、音楽を流しておくこと。もしお客様が来たら、精一杯接客してくださいねと。

 

近ごろはお店に足を運んでくださる方が増え、売れ行きも徐々に上がっていきました。楽天総合ランキングでは1位になりました。いまでは娘が帰ってきて、家業を手伝ってくれています。これからも「米ぬかソックス」を広めていきたい。他にはない米ぬか繊維を使った商品の魅力を、日本はもちろん世界へ広く発信していけたらと思っています。

 

 

米ぬかソックスという画期的商品を生み出した鈴木和夫さん。しかし、地方の無名メーカーが商品を売り込もうとしても、相手にされません。吐くほどつらい当時の状況を救ってくれたのはCAをしていた娘さんだったそうです。憧れの仕事を辞めて鈴木靴下に入社し、父を支えた3代目は、今では自身でもヒット商品を作るまでになっています。

 

PROFILE 鈴木和夫さん

すずき・かずお。1958年10月2日、奈良県生まれ。1980年3月近畿大学法学部卒業、同年家業の鈴木靴下工場に入社。2008年代表取締役就任。米ぬかを使った靴下「米ぬかソックス」シリーズを開発。楽天総合ランキング1位に輝くなど、大きな反響を集めている。

 

取材・文/小野寺悦子 写真提供/鈴木靴下