人を応援する、それが私の使命なんだ

── 現在は、NPO法人の活動にも精を出していらっしゃいます。

 

中井さん:夫婦として子どもがいない人生を歩んでいくことは夫に申し訳ない気持ちがありました。そのぶんと言ってはあれですが、私はNPOの活動をしたり、夫は野球をしたい子どもたちに指導をしたりするなど、時間を費やしていきました。何か別の形でほかの人を応援していくということが、私の使命なんだなというふうに捉えています。

 

中井美穂さん
NPO法人キャンサーネットジャパンのセミナーで司会をつとめる中井美穂さん

── 気持ちの面で変化はありましたか。

 

中井さん:子どもがいない負い目みたいなものは正直ずっとあります。お子さんがいらっしゃる家庭に比べて時間やお金を自分たちに使えるわけですし、子どもを育てる経験ができなかったことは残念だなとも思います。それに、夫や夫の家族に孫の顔を見せることができなかったという後ろめたさもあります。でも、誰もが産めるわけではないですし、子どもを持たないなりの人生を生きていこうという気持ちでいます。

 

3年ほど前から小児がんの啓発活動を本格的に始めたのですが、そういうことも子どもがいないことへの申し訳なさの裏返しの可能性はあるなと感じることもあります。ただ、動機は何であれ、誰かのためになることは取り組んだほうがいいですよね。チャンスがあれば子育てをしてみたかったという思いもありますが、現実を受け入れてできることを今できることをしていこうと思っています。

 

 

現在はNPO法人キャンサーネットジャパンで理事を務め、がんに関する科学的根拠のある情報を届けるための啓蒙活動を行っている中井美穂さん。病気を経験したことで自分の体について考えるようになり、少しでも意識する人が増えたらいいなという思いで活動を続けています。

 

PROFILE 中井美穂さん

なかい・みほ。フリーアナウンサー。87年フジテレビ入社。アナウンサーとして「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」など多くの番組に出演。退社後「世界陸上」(TBS)のメインキャスターを務め、現在は「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)、「スジナシ」(TBS)、「華麗なる宝塚歌劇の世界」(時代劇専門チャンネル)、「アルバレスの空」(BSテレ東・ナレーション)等にレギュラー出演。演劇のコラム、動画配信番組、イベントの司会、クラシックコンサートのナビゲーター、朗読など幅広く活躍。がん患者支援団体NPO法人キャンサーネットジャパンの理事として啓発のイベント・市民公開講座の司会などの活動も行う。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/中井美穂、NPO法人キャンサーネットジャパン