月1の週休3日制や年俸の自己申告制もスタート
── その後、2018年に4代目社長に就任されます。
坂和さん:社長に就任したのは僕が32歳のときです。まもなく会社設立100周年を迎えるタイミングで、新しい体制で節目を迎えようということになりました。愛媛の本社は引き続き父と母、祖母に任せて、僕は社長就任後も東京支店に残り、支店の拡充を図りました。
社内のチームワークを高めようと、会社のユニフォームやトートバッグを作って配布したほか、福利厚生や働き方改革にも力を入れています。月1回、週休3日制を導入し、年休は約135日を確保しました。残業時間の月平均は6時間ほどです。リモートワークも可にしていますが、出社する社員に不公平感が出ないよう、「フル出社手当」も支給しています。
さらに今年からは、自己申告年俸制(賞与は除く)を本格スタートします。自分の給与を自分で決める制度です。自分のビジョンを提案し、それを達成することを前提に年収の希望を申請してもらいます。会社が承認すれば、社員はみずからの言葉を実現しようと必死に努力するようになる。自主性をより強く持ってくれたらと思っています。
── 今後は会社をどう成長させたいと考えていますか?
坂和さん:僕は「自分たちは黒板業界を背負っている」、そう考えています。だからこそ、僕らにしかできないことをしていきたい。そのひとつが「SENSEI SONIC(先生ソニック)」という、先生を応援するイベントです。収益は度外視です。「今日の先生かっこいい」をコンセプトに、音楽好きの先生に集まってもらって、昨年10月にライブを開催しました。
先生という職業はすごく重労働で、負担が大きい。だからこそ、社会的な地位や価値が認められなければいけない。先生たちのかっこいい姿をみんなに見てもらいたい、知ってもらいたい。そこからの発想でした。僕らにとってもチャレンジでしたけど、情熱をもった先生方がたくさんいて、本当にかっこよかった。昨年のイベントはすごく盛り上がって、やってよかったですね。今年の夏には2回目の開催を目指しています。黒板のそばにはいつも先生がいる。だから、僕らが先生を応援するのはすごくマッチしていると思っているんです。

いまは次の挑戦として、先生のノウハウを引き継げないか探っているところです。先生は授業ごとに黒板に要点を板書していくけれど、消した時点で貴重な授業の内容が失われてしまう。それは、おおきな損失じゃないかと思っていて、データとして残せるように開発に取り組んでいます。
サカワとしては今後、電子黒板の製造・販売と先生を応援する2軸で事業展開していこうと考えていて、すでに構想を進めています。本当にやりたいことがたくさんあって。会社の社員もいろいろアイデアを持つ人が増えたので、これからはさらによりよい方向に進んでいきそうな気がしています。
PROFILE 坂和寿忠さん
さかわ・としただ。1986年生まれ、愛媛県出身。1919年創業の黒板メーカー「サカワ」の4代目社長。2009年にサカワに新卒入社。東京支店で電子黒板の営業職に従事。2015年ハイブリッド黒版アプリ「Kocri」を開発し、翌年ウルトラワイドプロジェクター「ワイード」を発売。2018年4代目代表取締役社長に就任。売り上げ記録を更新する。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/サカワ