コロナを機に支援の輪が一気に広がった

コロナ期間は「ドライブスルー方式」で支援物資を支給

── 周囲に理解者が出てきたのですね。

 

若林さん:はい。支援の輪が一気に広がったのは、コロナがきっかけなんです。お店を移転して半年後にコロナ禍に突入してしまい、飲食店は開店休業状態に。当時のコロナは外出も自粛するよう呼びかけられていたので、私と同じようなひとり親世帯は買い物にも行けない、仕事もない、子どもが病気になれば2~3週間は自分も外に出られないと、本当に追い込まれていました。

 

当時、行政から「こども食堂を中止しますか?ほかのところは皆さん閉めています」という連絡が来たんですけど「うちは続けます!」と返事をしました。こんなにこども食堂が必要な時期はないのに、中止していられないと思ったんです。行政の方には「本気ですか?」と驚かれましたけどね。ただ、コロナ対策で外食はできない、お店に食品などを取りに行って人と対面するのも心配、といった状況があったので、知り合いの企業の駐車場をお借りして、ドライブスルー形式でお弁当と支援品を渡すという方法を思いつきました。

 

数か月続けていると、「困っている人の助けになることをしたかったけど、何をすればわからなかった」というような企業がいくつも協力してくれるようになって一気に支援者が増えたんです。当時買い占めなどでなかなか手に入らなかったアルコール消毒やマスク、トイレットペーパーを集めて、ひとり親家庭にぜひ、と皆さん協力してくれるようになりました。

 

── 逆境をはね返す力がすごいです。

 

若林さん:3人の子どもを育てるシングルマザーとして、収入面でも精神的にも追い詰められた経験から、同じような大変さ、苦しみを味わっている方を何とかしたいという気持ちが強かったです。私は夫に離婚を突然切り出されて精神科に通うほどつらい時期がありました。元夫に養育費や家のローンを離婚してすぐに払ってもらえなくなって、自分の収入で何とかするしかない状況だったので。

 

コロナ禍が過ぎてからは、支援品が多く集まるようになったこともあり、こども食堂じゃなくて「子育て支援」に切り替えることにしました。地元の企業からは食材だけじゃなく、学用品や文具などをたくさん提供してもらえるようになり、ひとり親と困窮世帯を対象に、安心して使えるだけの量を配布するようになりました。