「病気の有無に関わらずみんなで食べられる」

商品の開発に成功した中村さんは、表皮水疱症の患者会の方に食べてもらうことにしました。生後すぐ、表皮水疱症と診断を受けた梅津真里奈さん(29)は、andewのチョコレートを「ありがたい存在」だと話します。

 

「口や喉に傷がついているときに、今まではプリンやほかのチョコレートを食べていたんですが、カロリーや糖分、栄養の偏りが気になっていました。かといって栄養補助食品は、味が受け付けなくて。このチョコレートは味もおいしくて体によくて、口溶けがいいというのがすごくありがたいなと思っています。

 

普段、知人と食事に行くと「梅津さんはこれ食べられないからやめようか」とか、「真里奈ちゃんでもこれなら食べられるんじゃない」と気をつかってもらうことが多いのですが、優しさから来ているものというのはもちろんわかるんですけど、ちょっとせつない気持ちもあるんです。病気の有無に関わらず、みんなでおいしく食べられるというのはすごくうれしいです。介護食などの独特なパッケージではなく、おしゃれでかわいいパッケージなことも、お裾わけがしやすくて気に入っています」

 

andewのチョコレート
「世界一やさしいチョコレートandew」の商品ラインナップ

中村さんは、患者さんのためだけではなく、誰もが手に取れるチョコレートにすることも重要だと考えています。

 

「ある患者さんから、『患者さん用の食べ物って食べたいと思いますか。自分が食べないものを私たちに勧めるんですか』と言われたんです。その話をしていたとき、テレビにモデルさんが映っていて。あのモデルさんが普段食べているとか、人生で何かプラスにしようと思って食べるものを作ってもらえたらうれしいとのことでした。

 

チョコレートがきっかけで世の中に発信していくなかで病気のことも知ってもらって、何か少しでもアクションを起こそうという人が増えてくれたらいいなと思います。もちろん、きっかけは自分のため、誰かのためでいいんです。そこからこういう病気があるとか、こういう障がいがあるとか、最近親が体調悪いみたいだと気にかけてもらって、コミュニケーションをとっていただく機会になったらいいですね。いつか雇用の場を作ることも、次のステージとして叶えたいことです。表皮水疱症の患者さんの中には、指がだんだんなくなってきてしまう方もいて、ものが掴めないとか、パソコンのタイピングができず、就職や進学に影響が出ていると聞きます。採用の方にはぜひ、できないことではなく何が一緒にできるかを考えていただけたらうれしいです」

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/中村恒星